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▼ 人の好みは人それぞれ



神楽ちゃんにボコボコにされてる銀さんを見て少し可哀想に思ったけど、仕方無いよね。
だって途中から泣いてるの絶対気付いてた
なのに無理矢理、両手押さえてまで顔見てくる必要なんてあった?
あそこはそっとしておいてよ

言ってくれた言葉は本当に、本当に嬉しかった。
神楽ちゃんにやられながらも口元少し笑ってるの見えたから怒ってはないはず


夕飯を食べながら、皆に夜出掛けてくる事を伝えた

「え?夜出掛けるって名前さん何処に行くんですか?」

「お登勢さんの所だよ。ほら昨日歓迎会してくれたでしょ? だからお礼行こうと思って。スナックしてるみたいだから、何か手伝える事あったら手伝ってくる。」

「お前の歓迎会だったんだから、別に気にする必要なんてねぇだろ。」

「気にして行くんじゃないよ、行きたいから行くの。これからもお世話になるだろうし、ね? だから行ってくる。」

「それならこの片付けは僕がしますよ。」

「本当?ありがとう新八くん! じゃ私もう行ってくるね!」

自分の食器を台所に下げて、行ってらっしゃいの声に言葉を返しながら玄関を出た



「名前さん張り切ってますね。いつも笑顔だけど時々寂しそうだから。銀さん何か言ったんですか?」

「……何も?」

「次泣かしたら銀ちゃんの眼球潰すアルよ」

「こえー事言うんじゃねーよ」









「こんばんは−!お邪魔しまーす」

スナックの玄関を開けて直ぐにタマさんに会ったから挨拶するとそのままお登勢さんを呼びに行ってくれた

タマさんは今日も綺麗

「名前じゃないか、どうしたんだい?」

「何かお手伝い出来ること無いかなと思いまして! 昨日は本当にありがとうございました!これからも宜しくお願いしますの気持ちも込めてます、何かお手伝いさせて下さいっ」

洗い物でも何でもします! と手伝いたいと申し出た私をお登勢さんは快く承諾してくれた。

ホールでお客さんの相手をしてやってくれと言われたので、お酒の作り方を教わり、料理やお酒を運んだり、お客さんとお話したり、時々絡んでくる人も居るけど楽しくて素敵な所だと改めて分かった

暫く店内を動き回っていると銀さんがお店に入ってきた
日付が変わっても戻って来ないから迎えに来てくれたらしい。

「あ、銀さん!」

「おー、本当に手伝ってんのな。」

「銀時、あんたも見習いな。 名前今日はもう良いよ、迎えも来たみたいだし帰んな。」

助かったよ、と良いながらお登勢さんは茶色い封筒を渡してくれた。

何ですか?と中を見るとお金が入ってて慌てて返却する

「え!貰えないですよ! 私そんなつもりで来たんじゃ無いんです!! 本当にただ手伝いがしたくて、働きたくて来たんじゃ無いです!」

だから貰えないです!と言って渡すも、受け取っては貰えず

「分かってるよ、ただのお小遣いだとでも思いな。化粧品とか買えて無いんだろ? 折角綺麗な顔してんだから、手入れとかもちゃんとしないと。」

「あ、すみません、私スッピンで店内彷徨いちゃって……!」

「そうじゃないよ、年頃なんだからお洒落して遊びなって言ってるんだ。」

でも私は手伝いたかっただけなのに……
これじゃお金貰いに来たみたいだ

「言っとくけど、こっちが勝手に感謝して渡してんだからね。 アンタが来てくれて助かった、だから感謝してその気持ち渡したんだ。それとも何だい?私の気持ちが受け取れないって?」

えぇ、強引、

「そ、そんな事ないです、けど、でも……!」

「いーから受け取っとけって。お前遠慮し過ぎだって言ったろ。俺も今日の報酬で買ってやろうと思ってたけど足りね−だろうし、貰っとけ。」

私が言葉に詰まっているとずっと黙ってた銀さんが声をはさんだ

う−、良いのかな、

「……えっと、あ、ありがとうございますっ、お登勢さん!大事に使わせて頂きます!」

また暇な時でも手伝いに来ておくれ、と言うお登勢さんの言葉に勿論です!!と返事をし銀さんとお店を出た


「貰っちゃったよ……そんなつもりじゃなかったのに……」

「オメーはまだ言ってんのか」

「だって……!」

「いーつってんだろーがよ。過度な遠慮ってのはな、却って迷惑になんだよ。人の親切は有り難く受け取っとけ。」

そう言われて、うっと押し黙った
それもそうだ、折角の親切を断るなんて失礼だよね

「……次はバッチリお化粧して手伝いに行く。」

「おー、そうしろ」

そうする!
有り難く使わせて貰らおう
必要な物は銀さんに買って貰ったり借りたりしてた
化粧品なんて無くても生きていけるし
でも折角だから買わせて貰おう

「銀さん迎えに来てくれたんだね? ありがとう」

玄関で靴を脱ぎながら銀さんにお礼を言うとお疲れと頭を撫でられた


お風呂から上がると銀さんはまだ起きていて、ボーとテレビを観ていたので驚いた

「えっ何でまだ起きてるの? 先寝ててって言ったのに。」

「……テレビ観てた。」


……でも今ボーとしてなかった?

「ね、そう言えばお礼言うタイミング逃しちゃってたんだけどさ、銀さんも探してくれてたんだね、帰る方法。ありがとう。」

「あーでも何も出てこねぇけどな」

「ううん、探してくれてたって事が嬉しい、ありがとう!」

笑って銀さんにお礼を言う、昼間泣いててちゃんとお礼言えなかったから

仔猫可愛かったね−と依頼の猫を思い出して何気なく言うと、そう言えば、と今度は銀さんが言葉を繋げた

「お前ってSなの?」

「え?」


何の話だ、突然脈略もなく出てきたワードに驚いて固まってしまった

「猫捕まえるときの発言がSっぽかったから気になってた。」

「……え?そんな所あった?」

「ビビっちゃって、可愛い−とか言ってたじゃん」

「言ってない! 言ってないよそんな事!」

神楽ちゃんが寝てるからボリュームは落としつつも、やや大きめで否定した

「えー?言ってたけど。」

「どんな耳してんの? 私Sじゃないし、普通だから。 人の痛がる顔とか泣いてる顔とか別に好きじゃないよ。」

「随分ざっくりした認識だな。」

そこでふと思った。
痛がる顔とか泣いてる顔が好き……
それって、

「銀さんじゃん」

「何?」

「いや、銀さんのやってる事がSじゃないの?意地悪い事しながらニヤニヤしてるよ。」

「そりゃ俺、ドSだから。」


……え?
ドS……

「えっ、そうなの?」

「あれ?知らなかった?」

意地悪いなとは思ったけど……自分で言っちゃうくらいSなんだ

けど、ドSって何?

「ドが付くと、響きが増すね。」

「内容も増すからな。」

「……例えば?」

「例え? ん−そうだな、」

顎に手を当て考える素振りを見せ、暫くしてチラリとこちらに目をやった

「声押し殺しながら泣き顔を見られまいと必死に隠すもんなら無理矢理でも見てやりてぇ……とか?」


っ!
な、なにそれ!
めちゃめちゃ楽しんでやってたの!?
いやニヤニヤしてたのは見たけども!
………腹立つんですけど、昼間言ってくれた事は凄く感謝はしてるけど、でもこれは腹立つ……!
ぐっと無意識に奥歯に力が入った

「……そーゆー顔も最高だわ。押さえ付けて泣かせたくなる」

「っ、Sなら、Mが好きなんじゃ無いの?」

私の事から話を反らそう、そう思った
何か口元笑ってて怖いし

「バカだねぇ名前ちゃん。 反抗的なヤツを調教すんのが楽しいんだろ?」

……こわっ!
こ、こわっ……!
なな、なんなの、てか何でこんな話になってんの!?

「そ、そうなんだ」

会話を終わられたくて適当に相槌だけした
人の好みは人それぞれだし、私には関係ない

もう寝ようと立ち上がろうとしたら

「で? 名前ちゃんってSなの?」

最初に戻った。


「……Sじゃないってさっき言った。」

「でもよ−怯えてビビってるヤツみて普通可愛いって言わなくね? 普通は可哀想とか言うだろ?」


……私、何で可愛いなんて言っちゃったんだろう
凄く後悔してる今。
ごめんね、あのとき可愛いなんて言ってごめんね

耳をペタんと垂らして目尻下げながらビクビクしてる姿が何ともまぁ、可愛いかったのは事実。
でもそれだけ。
別に銀さんが言ったような事は思ってない


「別にそれだけでSって事にはならなくない? なら銀さんはもし私が誰かに殴られて泣いてたら、泣いてる−って楽しい気持ちになるの?」

「なるわけねぇだろ。そいつぶっ殺す。」

「え、目こわっ。例えだから、目が怖い。 つまり一概には言えないって事だよ。私が泣いてても喜ばないんでしょ?時と場合によるって事。」

よって私はSじゃない。そう続けると、ふーんとキツくなった目元は戻っていた

「でもよォ、結構反抗的だよな?」

「……ねぇ、何なの?どうしても私をSにしたいの? 仮にそうだったらなんだって言うの?」

「何でこうも煽られるかな−と思っててよ。Sっ気あるんだなって少し納得した。だからつい……ってワケ。 気−付けろよ−、これから一つ屋根の下だし。」

「……あんまり近付くなってこと? 」

「ちっげーよ、家族っつったろ? まぁ、ちょっとスイッチ入ったらごめんな−ってくらい。」

「何それ軽いね。 私、銀さんが家族って言ってくれて凄く嬉しかった」

「わーてるって!大丈夫!お前が煽んなきゃ大丈夫だから!」

「いや私のせいにしないでよ。私煽った事なんて一度もないから。」


何で結局私のせいなの?

あぁ、そっか

「分かった。じゃあ私Mになれば良いんじゃない? そしたらそのワケわかんないスイッチ入らないよね。」

「はぁ?」

今度は銀さんが呆れた顔をした

「……お前なれるわけ?Mに?」

「もっと苛めて−とか思えば良いんでしょ?」

「え、待って、何今のセリフ、もう一回言って?」

「馬鹿じゃないの」

何なんだ、結局どっちでもスイッチ入るんじゃないの?

もう寝る、と布団に向かうと銀さんも着いてきた

布団に座って毛布を掴むと後ろから頭を小突くように軽く押されて、何かと思って振り返ったら今度は肩を強く押されそのまま背中から倒された

目の前には銀さんが私に跨がってお腹の上にしゃがみこんでいる
自分の膝に肘を置き頬杖を付いた状態で。
ほんの軽く体重を掛けられていて重くは無いけど起き上がる事は出来ない

何だこの状況は。

下から銀さんを睨むと、ニヤニヤしながら、「どーよ?」と聞いてきた

「何が」

「Mだったら喜ぶんじゃね?この状況。」


……まだ続いてたんかい、その話

お腹の上に座られて喜べるわけない
てか何、これで喜べないって言えばまた最初の
お前はSか、に戻るわけ?

ループじゃん


上からニヤニヤした顔で見下ろされて心底イラっとしたから、銀さんの襟元を掴み思いっきり力任せに引っ張った
顔を反らして自分の顔の横に銀さんの顔が落ちるように

バランスを崩した銀さんは布団に手を付いて自分の体を支えていた
引き寄せた顔の頬に唇を寄せる
一瞬ビクっと身体が動き直ぐに離れようと力が入ったから、もう片方の手を首に回してそれを邪魔した

横目で睨まれたのが分かったけど、でも全然怖くない
だって、耳が赤いの見えてるもん

目の前にある耳元に唇を近付けて


「ドSって照れるんだ? この状況。」


銀さんの意地悪スイッチはどこで入るのか分からない
だって私煽ってない
でも、やられてばっかりだと悔しいじゃない
昼間は散々泣き顔見られたし


ゆっくり耳元から顔を離すと、両手を軽く上げ降参のポーズを取った銀さんに ふふっと笑いながら私も手を退けた。

ふらっと立ち上がった銀さんに続いて私も起き上がり、多少寄れた布団を直す

「もう寝ていい? おやすみ銀さん 」

返事は聞こえなかったけど電気消してくれたし私も布団に潜った









……やられた……

まさかあんな事してくるとは思わなかったから完全に油断した

耳に上った熱が自分でも分かる

ちょっとからかうつもりだった、Mになるとか言い出すもんだから軽く意地悪するつもりで。

返り討ちに合うなんて思いもしなかった
何で、俺の耳赤くなった!!
耐えろよ!
ほっぺにちゅーされたくらいで赤くなってんじゃねぇよ!
思春期のガキじゃあるまいし、


つーか、やっぱSっ気あんじゃんこいつ。




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