草と太陽
太陽は、自分自身が燃えています。遠き地の上、自らが照らすものが何であるかは知る由がありません。
草は、在るべきところで萌えています。条件を満たさなければ、花を咲かせることは出来ません。
捨てられて、この地にたどり着いた草と太陽は、それぞれが孤独でした。
触れれば火傷を負ってしまうので、太陽には誰も近付いてはくれませんでした。
存在すらも気付かれずに、草には誰も足を止めて見てはくれませんでした。
それぞれが、何故自分たちにそんな名前が付けられたのかと悩んでいました。そして、お互いに同じ悩みがあるのだと悟った草と太陽は、少しずつ惹かれあっていったのです。
草は、勇気を振り絞って、太陽に話し掛けました。
「太陽さん。君のその歌声は、きっと大地を彩る命の源なんだね」
そう言った草には、耳なんかありませんでしたが、太陽の温かさには、まるで美しい旋律が奏でられているように聴こえていたのです。
「それでは、あなたがその彩りなのでしょう。たくさんの色で、綺麗な花を描くのだから」
そう言った太陽には、目なんかありませんでしたが、草が咲かせる色とりどりの花たちが、まるで絵画のように見えていたのです。
太陽は草の思いに応えてくれました。
二人は、手を取り合うことが出来ました。
誕生を誰かが祝ってくれたわけではありません。
お揃いの印を付けてくれた人もいません。
派手な装飾で気を引いたのではありません。
送り届ける人もいません。そんな場所もきっとありません。
それでも草と太陽は、繋がっているのです。
陽の光で育った蝶が、花の蜜を吸いに来ました。
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