草と太陽

 太陽は、自分自身が燃えています。遠き地の上、自らが照らすものが何であるかは知る由がありません。
 草は、在るべきところで萌えています。条件を満たさなければ、花を咲かせることは出来ません。

 捨てられて、この地にたどり着いた草と太陽は、それぞれが孤独でした。
 触れれば火傷を負ってしまうので、太陽には誰も近付いてはくれませんでした。
 存在すらも気付かれずに、草には誰も足を止めて見てはくれませんでした。

 それぞれが、何故自分たちにそんな名前が付けられたのかと悩んでいました。そして、お互いに同じ悩みがあるのだと悟った草と太陽は、少しずつ惹かれあっていったのです。

 草は、勇気を振り絞って、太陽に話し掛けました。

「太陽さん。君のその歌声は、きっと大地を彩る命の源なんだね」

 そう言った草には、耳なんかありませんでしたが、太陽の温かさには、まるで美しい旋律が奏でられているように聴こえていたのです。

「それでは、あなたがその彩りなのでしょう。たくさんの色で、綺麗な花を描くのだから」

 そう言った太陽には、目なんかありませんでしたが、草が咲かせる色とりどりの花たちが、まるで絵画のように見えていたのです。

 太陽は草の思いに応えてくれました。
 二人は、手を取り合うことが出来ました。

 誕生を誰かが祝ってくれたわけではありません。
 お揃いの印を付けてくれた人もいません。
 派手な装飾で気を引いたのではありません。
 送り届ける人もいません。そんな場所もきっとありません。

 それでも草と太陽は、繋がっているのです。
 陽の光で育った蝶が、花の蜜を吸いに来ました。


[ 3/5 ]

[*前の一匹] [次の一匹#]

[mokuji]

[しおりを挟む]

戻る





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -