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「え、マリ帰っちゃうの?!」
「そうよん、あと2週間くらいでね。」
ピッと彼女はピースをしたけれど、多分その指の意味は2という数字を表しているのだろう。
たしかに元々9月までとは聞いていたけれど早すぎやしないだろうか。
「どうしても帰っちゃうの?」
「んふふー、引き止めてくれンの?嬉しいねェ、あたしゃ幸せだよ。」
マリはニコニコと幸せそうに笑うもんだから私もしかめていた顔を少し緩ませる。
しかし彼女にはこの数ヶ月でお世話になったものだ、と思い出を振り返る。
……あれ、なんか事態をややこしくしてることしか思い出せないぞ。
「楽しかったのは楽しかったけれどね。」
「うん?何かいったかにゃ?」
「いんや。そうだ、次の休みデートでもしますか。」
「え?!何々?優等生ちゃんに引き続き私まで食べようって言うの?プレイボーイだねえ。」
「じゃかしい!ちゃうわい!」
大体、今の女子中学生はプレイボーイなんて言葉つかわんわ!
マリは口元に手を当てて笑っていたがその手も下ろして「うん、行こう」と小さく私も見ずに答えた。
たく、この子も素直じゃないんだから。
少し頬が赤くなってるのを私は見逃してやんないんだからね。
「あれ、ていうかマリ、なんで次の教科の教科書だしてんの?そんなに真面目だったっけ?」
「失っ礼だにゃあ。次の科目、宿題出てたじゃん?あれしようと思ってさ。」
「真面目じゃなかった……、ってえ、宿題?!」
「そうだよん?……あっれ〜、もしかしてクラスで成績がトップの名前クンがまさか宿題をやってないなんて言わないよねえ?」
「ははは、まさか私に限ってそんなこと……、……シンジぃ!頼みごとが!!」
シンジに群がっているトウジとケンスケは机に向かって黙々と何かをやっている。
多分、宿題を見せてもらっているんだろう。
一生の頼みだと軽いお願いをしたら私にも見せてくれると言ってくれたので彼のことは今度から神様と呼ぼう。ありがとう!神様!まさにシンジと書いて「神児」だね!
「ところでさ、シンジ。」
「ん?あれ、そこどうして間違った解答かくの?ぼ、僕の答え間違ってた?!」
「あ、いや、ここはリアリティの追求をしただけで……。間違った解答しとけば丸写しってばれないし。この答えは……、うん、合ってるよ。」
「お前も悪いやっちゃなぁ。」
「てか名前が間違った解答すると先生が教科書に書いてる問題自体が間違ってるかもしれないって大騒ぎするから正解書いとけよ。」
「ああ、あったねそういうこと。一生徒をどれだけ過大評価してんのか……。ってそうじゃなくてマリの話なんだけれどさ。」
「真希波……、じゃなくてマリの……?」
シンジは先日マリから「真希波じゃ可愛げがないからマリって呼んで」と言われたのを思い出したらしく言い直した。
「真希波のおっぱいはでかいとかそういう事か?」
「ああ、あれは俺の推察からいくとD以上は確定だね。シンジは大きいほうが好きなの?」
「えっ!えっと、……そ、そうだねえ……。」
「胸の話違う!もうすぐマリ帰っちゃうでしょ?だから何かしてあげたいなって思ってね。」
三人は表情を同じにした。納得したような顔だった。
……私が胸の話を本気で振ると思ったのか。この子たち……。
まあ、胸より脚派だけれどね!
「でも何かって……何をするの?」
「そりゃ……思い出に残ること?」
「あれはどうや、あれ!ほら、パーチーみたいなの。」
「おお!トウジ、ナイスアイディア!!」
パーティーか……これはいいかもしれん。
となるとメンバーだけれど……、ここらへんの主要メンバーを誘うか。
「それだったらプレゼント交換とかも面白そうだね。」
「みんなからのメッセージとかもいいな。俺ビデオ撮ろうか?」
「ええな!ビデオレターや!記念になるな。」
「うんうん、そうやってアイディア出してくれる君たちが大好きだよ。」
メモしなくても覚えれるからドンドンアイディアを覚えていく。
なるほど、ビデオレターはいいかも。
となるとマリにバレないように進めないとな……。
そうして私のミッションは開始された。