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「……ちょいまち、レイ。今なんてった?」

「私とデートして欲しい。」


周りの声がより一層どよめく。
待って、待って。どよどよしたいのは私の方よ?!
レイはいいの?!中身女子って事気づいてるんでしょ……?


「ちょっとこっちおいで。」


レイの真っ白な手首をとって私たちのやりとりを見守るクラスメイトの視線を尻目に教室を飛び出した。
レイと言えば、寡黙な美少女というイメージがあり、どちらかといったらそういった恋愛には興味はないという風に取られがちだ。(でもアニメや劇中では明らかにシンジに好意を抱いていたけれど……)

人通りの少ない場所にやってきて立ち止まるとレイも足を止める。
後ろを振り向くとどうして移動したかがわからないといった感じの表情を浮かべているレイ。


「誰に何を吹き込まれたのかな?」

「真希波さん。」

「マぁリぃ〜〜?」

「タンマタンマ!私はちょっとしたアドバイスいったんだって!」


もしかしたら居るかもしれないと思って言ったらマジで居た。
ジト目でマリの声がした方向を見ていると可愛らしく隠れていた壁から顔を出した。


「何をアドバイスしたの?」

「だってその子が『青春って何?』って聞いてきたからさー。『青春とは、恋や勉強に時間を費やすことだよー』って。」


あれ?意外に普通のアドバイスじゃん。


「男女のくんずほぐれつを勉強でもすればもっと青春楽しめるって言ってた。」

「真希波・マリ・イラストリアス!ちょっとこっちに正座!!」

「にゃあー!!」

「ちっ、逃げたか。」

「苗字くん、ところでくんずほぐれつって何?」


この目、渚くんそっくりだなぁ。絶対教えないけれどね!!
たく、マリもなんて事教えてるんだ……、確かに男女間では必要かもしれないけれど。


「レイはなんで青春したいの?」

「真希波さんと話してて、聞いた。ここの世界は平和に創ってもらってるって。だから、幸せになることが貴方への恩返しだと思ったから。」

「レイ……。」

「学生ならどうするか、そう思って青春の事を聞いた。デートに誘ったのは、貴方なら女性の気持ちもわかるし、私の事も知っているから。」

「でもデートの相手はシンジじゃなくていいの?」

「男女だと何が起こるかわからないから。」

「シンジを信じてあげて!シンジだけに!……まあ、そっか、……ありがとね。」

なんなんだ、君たちは。私を泣かせたいのか?カヲル’sに引き続きレイまで私にお礼なんて。
初デートの相手に私を選んでもらえたというのも嬉しいし。
手を伸ばしてレイの頭にポンと乗せてくしゃくしゃと撫でると彼女は顔を赤くしてうつむいた。
おお、新鮮な反応だ!可愛い!!アスカを撫でても「やめんか!」と蹴られそうになるからなぁ。

レイの反応に癒されていると予鈴のチャイムがなった。


「あ、戻らなきゃ。……レイ?」


教室に戻ろうと踵を返したのだけれどレイはその場から動かず、私の裾をくいと掴んだ。


「……返事。」

「ああ、デートね。もちろん行きましょう。」

「……うん。」


彼女は小さく、そして照れながら笑った。
ははは、男子め、ざまーみろ。レイの笑顔は今だけは私のモンだ!

教室に戻るとやはり集まる人の目。
席についた私に一番に飛びついてきたのは、アスカだった。


「名前、行くの?」

「どこに?」

「デ、デートよ!デ・エ・ト!あの優等生と!」

「んふふ、行くよん。」


どこかで聞き耳を立てていたのか、教室全体がどよめく。
中学生ってホントこういう話題好きだよねー。それもそうか、相手はレイだもんな。


「デート、いくんだ……。」

「私、苗字くんってアスカと付き合ってるんだと思ってた。」

「ちくしょう……俺も……。」

「え、渚先輩といい関係だとばかり……。」


ちょっとまて、最後の誰だ。
本鈴とほぼ同時に担任の先生が入ってくる。アスカは渋々といった表情で自分の席へと戻っていった。あれはまた後でこっちに来る気だな。

自分も中々に愛されてるんだなあ、とちょっとだけ嬉しくなった。
ノートを切り取り、そこにデートのプランを書き込む。
題して「レイに女の子としての喜びを味わわせよう!(not18禁)」。
……これは腕がなるな、と授業中にも関わらず笑ってしまった。


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関係ないですが「味あわせる」じゃなくて「味わわせる」が正しいんですね。
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