童話のようなキスをして
「そろそろ起きない?もう朝だよ?」
そんな声が私の意識を浮上させた。
まだまだ寝てたい、と思うのはきっと人間に生まれてきた以上逃れられない欲望だと思う。
このまま寝たふりを続けようか……、なんて思ったけれど起こしに来てくれた彼にも悪いしちょっとした悪戯を仕掛けながら起きよう。
「シンジがキスしてくれないと起きない。」
「き、キキキキキス?!……えっと、その、僕がしていいの?」
そんな上ずった声が背中の方から聞こえた。
言った手前恥ずかしくて私は頬を染めていたが、今シンジがどんな顔をしているか見たくなって顔が見える位置まで寝返りをうつ。
彼の顔は多分私よりも赤くなっているだろう。
漫画だったならば湯気がでそうなくらい首のあたりまで真っ赤になっている。
「キスして欲しい」に照れたのか、はたまた「していいの?」という事を聞いてしまった自分に照れているのか……。
ゴロリと寝返りをうってシンジの方を完全に向くとシンジはゆっくりと私の方に歩みをすすめる。
私は両腕を前につき出すと彼はその間に身体を挟んできた。
「名前は朝から大胆だね。」
「シンジにおとぎ話のように起こしてもらいたいだけよ。」
シンジは身体を乗り出しベッドに手をつくとその重みにベッドはギシリと軋んだ。
仰向けになってキスを受け入れやすい体勢をとる。
ゆっくりと降りてくる顔をしばらく見ていたかったけれど、無意識に私は瞼を下ろす。
目を閉じるとなんだか感覚が研ぎ澄まされたかのような感覚になる。
口にあたる唇の感覚。ふにゅりふにゅりと何度も押し当てられて私の心臓は鼓動を早くする。
……しかし……、長すぎやしないだろうか。
啄むようなキスはどんどんと回数を重ねふわふわとした感覚が落ち着いてくる。
そろそろ起きる、と声をあげようと口を開いた瞬間に口内にぬるりとしたものが入ってきた。
「んむぁっ」
「っ。」
顔を反らそうとしても顎を押さえられて逃がすまいとしている。
息は徐々にテンポをあげてお互いの唾液が混ざり合ってクラクラするような音をたてていた。
――……ああ、もう、おとぎ話はこんな激しいキスはしないんだからね!
prev / next