先生だからって
名前は保健の先生だ。
もちろん、僕とは先生と生徒という関係で
そこらへんにいる生徒と同じ立ち位置。
「先生、怪我をしたんだ。」
そう先生に伝えるとまたか、そんな顔をされてしまった。
でも僕にとってこれは日常茶飯事で。むしろ顔を覚えてもらっているという事実が
僕の胸を躍らせる。
「君は、……わざと怪我をしているでしょ……」
「怪我をしやすい体質なだけだよ。何故か首が多いけどね……」
「首となったら保健室より病院に行ってね?あと先生には敬語を使いなさい。」
ガラガラと音を立てて氷が袋に入れられる。
その姿をずっと見ている僕。
彼女に恋心を抱いていると気づいた時から、目が離せなくなった。
ふと、目に留まるものがこれは彼女に似合いそうだとか、
彼女の役にたつかもしれないとか、
そんな事を考えていたら、『それが恋というものではないのだろうか』と
心の中から聞こえてきた。
そんな感情を抱くとは思っていなかったから、ウィンドウに写る僕の間抜けな表情は印象的で記憶に残っている。
「はい、これ患部に当てて冷やしとくのよ?今日はそれで明日は湿布ね。湿布が家にないなら取りに来なさい」
「君の家にかい?」
「ほ け ん し つ に だ !」
「おや、それは残念だ。」
「何が残念だ。もし綺麗に内出血をなくしたいなら明後日くらいから温めた方がいいわ。はい、おしまい、早く教室に帰んなさい。」
「もう少し、一緒に居たいな……?ダメかい?」
うっ、と声を詰まらせる名前。
先生だからといって手加減はしないからね……?
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