お題 | ナノ


  嫌気が差すほど、好きだよ


どさり、と押し倒された。
身体はソファに包まれ、衝撃はなかった。

目の前にはシンジ。シンジから押し倒されたと分かるにはしばらくかかった。


「ちょ、ちょっと、なにしてるの……?」

「皆、皆いなくなるんだ……。だから名前をつなぎとめておく……。」


そういって、彼は私の衣服の中へと手を伸ばす。
酔いしれるようなムードも素敵な言葉もない、ただの求愛行為。
というか束縛衝動。
せめて、好きだ、とかそんな言葉もあればこっちとしては嬉しいのに。


「やめ、て……!シン、ジ……ッ」

「抵抗なんてしないでよ!」


乱暴に顔の横に手が置かれる。置かれるというか叩きつけていた。
正直、そこらへんは面倒だと思う。
シンジは繊細なんだ、繊細すぎて、傷つきやすい。


「ほら、君だって僕から離れるんだ……。」


口ではそういっても、彼はしっかりと私の服の裾をしっかりと握っている。
離れてほしくないなら、口で言ってよ。私は言葉でもほしいんだから。


「シンジ、好きよ……。」


彼の頭をゆっくりと抱え込み、抱き寄せる。

彼は静かに私の胸の中で涙をこぼした。


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