……碇シンジ夢/甘
4/1。本日はエイプリルフールだ。
ドアをあけ、一緒に登校するために待っているだろう彼を見つけて私は高らかに声をかけた。


「実はエイプリルフールではなくてエイプリールフールなんだよ!」

「それは嘘だね。」


おはようという言葉よりも先に彼に嘘という挨拶をしたんだけれど、
その嘘もすぐにバレてしまった。
……私、つい先日までエイプリールフールだと思ってたんだけれど……。

シンジはふう、と一息ためいきをつくと私におはようと朝の挨拶をしてきた。


「こんばんわ!」

「なにそれ、嘘でもなんでもないじゃん。」


クスリと楽しそうに笑ってくれた。
それに対して私は満足のいくものだと捉えたけれど、シンジの言うとおりなのだ。
私は嘘を言っていない。

実はエイプリルフールのルールというものがある。
一つ、嘘は午前中に。
一つ、嘘は一回限り。
一つ、午後はネタばらし。
……そしてそのエイプリルフールにいった嘘は本当にならない。というジンクス付きだ。

だから私はもう最初の最初で嘘をついてしまっている。
もうこれ以上は嘘をつけなくなってしまった。


「しかし……、なんでエイプリルフールなんて日があるんだろうね。」

「なんだったかなぁ……確か嘘の新年という事だったっけな……。でもさ、なんだかワクワクするよね。嘘をつけるなんて。」


そう無邪気に笑う彼の顔をみて、なんだか可愛いと思ってしまう。
私は彼に恋をしている。
こうやって毎日登校が一緒にできるこの時間がすごく好きだ。
そんな彼に嘘でも「嫌い」だなんて言えるわけもなく。
嫌いという気持ちは微塵たりとも思ったことがないし、もしそれで傷つけたりしたら私は自分自身を呪うだろう。


「シンジはもう嘘をついたの?」

「まだだよ。僕そういうの咄嗟に出るほど器用じゃないし。」

「器用さ関係あるかなぁ?」


どちらかと言ったら騙された事が多い人の方がそういう嘘は上手そうだけれど……。


「名前は嘘が下手くそだよね。」

「なにおう!?じゃあシンジがびっくりするくらいの嘘をついてあげようじゃないか!」

「へえ?」


ニヤニヤと私の方をみて笑うシンジ。
……言ったのはいいけれど、私も咄嗟にそんな驚かせるような嘘を思いつくこともないし……。
しかもルールは嘘は一度きり。
こういうルールは守りたいから嘘は言いたくないんだけれど……。

このまま流れにまかせて好きと言おうか?
ああ、でもきっと嘘だと思われる。
嫌いではない。じゃあどうすれば……そう考えていたら私に妙案が浮かんだ。


「君は私の彼氏になる!ドヤ!」


むしろこれはただの願望だ。
嘘なんかじゃない。と自分に言い聞かせる。
これだったら相手も傷つかせることもないし、冗談だと思われる可能性は高いし、
何より私いまサラッと告白が出来た!!


「はは、それはすごい嘘だね。」


私の今世紀最大の言葉は一蹴で笑われてしまった。死ねる。
でもそのあとに追いかけるように、私の方を見もしないで
「けれどそれはすぐに本当になるかもしれないね」なんて言葉をはいた。

……嘘じゃ、ないよね?


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