「これもサークル活動の一環だ!」
そう団長が言ったのを今でもよく言ってくれたと褒めたいくらいだった。
僕らが今いるのは遊園地。
「遊園地に行きたい」という団長の一言に皆があっけにとられた。
もちろん普通に遊びに行きたいという本心が見え隠れしていて「どうせ行きたいだけでしょ?」と声をかけられたが、先程の一文を声高らかに言ったのだ。
もちろんそんな風に言われたら名前は断れないので僕は成り行きを見守っていた。
結局多数決というかたちになり、全員一致で行くという事になった。
……皆行きたかったんだね……。
それから皆で休みを合わせて遊園地に来て今に至るという感じだ。
「でも遊園地にくるの何年ぶりだろう……。」
「僕も随分ときていなかったなァ……。」
見上げれば楽しそうにはしゃぐカップルや笑顔が絶えない家族連れとか……。
もし僕らも二人っきりでここにこれたら名前は今と同じようにワクワクしていただろうか?と名前を見ると隣の僕の存在を忘れているかのように目をキラキラとさせながらアトラクションをみていた。
「苗字さんはどれに乗りたいんだい?」
「あ、えっと、どれでもいいんですけれど……、お化け屋敷に行きたいなぁって思ってます。」
「お、いいな。じゃあお化け屋敷行くか。」
「お化け?!ヤダヤダヤダ!」
団長が賛同をした瞬間に別の声があがる。
どうも彼女は怖いものがイヤらしく、団長が一人置いていけないということで残ってしまった。
なので、今お化け屋敷の前に立っているのは僕と名前の二人だけだ。
「私、余計な事いいました……?私があの場所に残れば良かったのでは……。」
「名前さんはお化け屋敷に来たかったんだろう?それに団長はサークル活動の一環と言っていたけれど、どちらかというなら君との親睦会みたいなものなんだ。だから遠慮はしなくてもいいよ。」
僕が団長のかわりにのころうかなとも思ったけれど、団長は気にせず行ってこいと言っていたのでせっかく二人っきりになるチャンスだ。
ありがたく頂く事にした。
お化け屋敷と言ったら女性が怖がるというイメージがある。
ただ……、名前は自分から行きたいと言っていたから多分その手の怖がるというのは期待しない方がいいのかもしれない。
「ちょっとドキドキしてきました!」
「それはよかったよ。」
内心では少しガックリとしているけれどね。
そして僕らが入れる番になり、中へと入った。
入った瞬間に後ろのドアがしまり真っ暗になる。
前の方も見えないけれどかろうじて次に行く道が見えた。
数歩あるいて自分の足音しか聞こえない事に気付く。
「苗字さん?」
「あ、あ、あ、あの、先輩……。べ、別に怖くはないんですけれど、思った以上に見えなくて、明るいところに出るまで……ご迷惑かと思いますが裾を掴ませてくださいませんかっ?!」
「え?」
ここが明るくなくてよかった。
徐々に顔に熱が集まる感覚がする。期待していなかったことだから余計に嬉しくなってしまう。
名前が僕に頼ってくれた。この僕にだ。
しかもなんて可愛いお願いなんだ。どこまで君は僕を誘惑すれば気が済むんだい?
未だに動けずに居る彼女。その名前のうっすらと見える手に僕の指先があたる。
「!」
思わず手を引っ込めてしまう。
触った、触ってしまった。僕は今彼女の肉体を触ったんだ。
彼女の一部を。もう一度触れていいだろうか。
恐る恐ると彼女の手の甲に指を滑らせる。
きめ細かい手だ。僕の手の中に今あるんだ。温度も感じる。もう僕はこの手の感覚を一生忘れないだろう。
「あ、あの渚先輩?」
「ああ、ごめんごめん。暗いからこれが君の手かどうか確かめたかったんだ。」
これ以上は触って楽しんでいることはできないだろう。
名前の手を僕の服へと触らせるとスっと下に降りていき裾を掴んだ。
その手の動きだけで僕は興奮をしてしまいお化け屋敷も遊園地もしばらくは集中できなかった。