久藤は猫みたいだな、とたまに思う。
 なんつーか、着かず離れずみたいな絶妙な距離感、とか?かと思えばいきなり甘えてきたりとか。
 マイペースで、思い通りにならなくて、でもたまに自分の心を読んだように行動してきたり、なんとも気まぐれなところがそっくりだ。…まぁ、だからどうしたという話だが。
 …ああ、あとあれだ。周期的に発情期がくるとこ、だな。



「ねぇ、木野ぉ」
 猫を撫でるような声色でそう言いながら久藤が抱き着いてきた。普段べたべたするのとは無縁なのに、こういう時だけはいつもそうだ。それも急にそうされるもんだから、こっちとしては堪ったもんじゃない。
「…なんだよ、」
 答えなんかとっくの前から知ってたけど、なんて言うのかと思ってそう聞いたら、一瞬の躊躇いもなく、セックスしたい、何て言うもんだから、逆にこっちが恥ずかしくなってきた。
 初めて一緒に寝たときはなんていうか、成り行きって感じだったし、どっちが誘ったかとか全然覚えてない。けど、たぶん俺のような気がする。ちなみに最近の記憶ではそうだった。誘うというよりは、襲うに近かったような気がするが。
 だから、普段の久藤と、今の久藤は全然、全く、別人だ。俺が本当に別人だったりしないかと少し不安になるくらいには。
 でも、いつもよりもとろんとした目を上目使いにして見つめながら
「…しないの?」
 なんて言われたら…まぁ、我慢なんて出来ないよなあ。



「あー、だるい…」
 いかにもけだるそうな声でそういった久藤は枕に顔を埋めていた。これも、らしくないと言えばらしくない。
 俺はそれを横目でみながら、呟いた。
「お前ってさあ、猫みたいだよな」
 それが聞こえたらしい久藤が、どこが?と枕から顔をあげて聞いてきた。
「気まぐれなところがだよ」
「木野は、嫌い?」
「…嫌いじゃねえよ」
「はっきり言って。」
 じっと見つめてくる瞳に気圧されて、好きだよ、といったら久藤は目を細めて笑った。
 …やっぱり、猫みたいだ。




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