「よっ、スガ。久しぶり。」
「大地!久しぶりだな!」
 教会を訪ねてきた、友人である澤村大地に菅原は笑いかけた。
 澤村はこの村の村長に若くして選ばれた男で、その手腕は澤村が村長になってから治安がよくなったと言われるほどだ。その澤村と菅原は、いわゆる幼なじみという間柄であった。それぞれに仕事を持つようになってから毎日会うというのは出来なくなったが、時間があいたときなどにはよくこうして二人は会っていた。
「そういえばスガ、森で倒れてたヤツを拾ったって聞いたけど、大丈夫だったのか?」
 なんでもない世間話の途中で、思い出したように尋ねた澤村に、菅原は笑って答える。
「ああ、全然。ちょっと変なこともあるけど、怪我も嘘みたいによくなってるし。さすがに走ったりは無理みたいだけど。」
 ほら、もうおもちゃになってる、と菅原は窓の外をみやった。そこからは、子供たちに囲まれてどうすればいいか分からず困惑している影山がみえた。感覚が鈍っていないか確かめるために弓を引きたいと言っていた影山は、きっとそれを外で遊んでいた子供たちにみられたのだろう。
 声はよく聞こえないがなんとなく子供たちの台詞が想像ができて、菅原はくすくすと笑う。澤村もそうだったのか、からからと笑った。
「本当だな。どんなヤツかと思ったら、いいヤツそうじゃないか。」
 澤村の笑いながらの一言に菅原はうなずく。
「うん。俺も酷い怪我してるから、なんか訳アリなのかなーと思ってたけど、全然そんな感じじゃないし」
 むしろかわいい?と菅原が言うと、澤村は困ったように眉を下げて笑った。
「ちょっと危ないやつっぽいぞ、それ」
「え」
 澤村にそういわれて菅原は思わず固まる。
 影山はここにきて数日の間は菅原に感謝をしながらも早くここから出ていきたいといった様子で、もう動けるのだから出ていくと言い続けていた。しかし足に負っていた深い傷はまだ完治仕切っておらず、動けるといっても足を引きずるような状態でとても出ていけるような状態でなかった。菅原は何とかそんな状態で出ていってもこの森を抜けられるはずがないと説得し、なんとか取りあえず足の傷が完治するまではと影山をここにとどまらせた。
 無愛想な奴だな、と菅原ははじめ思っていたが、よく観察すればすねたり喜んだり、わりと表情豊かなことがわかった。少し人見知りのきらいがあるようで、始めの頃こそ猫が威嚇するように菅原と一定の距離を置いていたが、しばらくすればそういうこともなくなり、動けるようになるとここにいる負担を少しでも減らそうと不器用ながら努力する姿は菅原にとってとても好感が持てたし、背丈は自分よりも大きいがどこか幼い反応をする影山を子供のようでかわいいと思っていたのだ。
 それを危ないって、どういう意味だ。
 菅原が動揺しているのに気づいているのかいないのか、澤村はさて、と座っていた椅子から立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ行くな。なんかあったらいつでも頼れよ。」
「ああ。ありがとな、大地」
 去っていく澤村に、菅原は手を振る。その姿を見ながら、長くいると心まで読まれてしまうものなのだろうか、と思うのだった。


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