※この物語には完全パラレル設定です。天馬と霧野の出会いから捏造。天馬が実は女の子だったんだよ〜な天馬女体化ものです。苦手な方は注意!

--懐かしい夢を見ていた

それは俺が小学2年の春休みに出会ったある少女との思い出。
早咲きの桜が満開の花弁を揺らす中、犬の繋がっていないリードを握り締め、降り始めた雨の中泣いてた女の子が1人。
白い帽子に水色のワンピース。
転んでしまったのか擦りむけた膝小僧からうっすらと血が滲んでいるようだ。
『おい。大丈夫か?』
『ふぇっひくっ…うくっ…サスケがぁ〜いなくなっちゃったのぉ〜』
『サスケ?』
『うん…私の飼ってる犬なんだけどね…すっごくおっきいの…だから』
『力に負けて逃げられたか』
『首輪がすぽんってなっちゃって…サスケ、知らないわんこ追っかけてどっかいっちゃったの…どうしよう』
ぐすぐすと鼻を鳴らしてその子は不安げに俺を見つめてくる。
俺はとりあえず、少女の膝の手当てをしてやらないといけないと思い、上着のポケットからハンカチを取り出して、傷の手当てをしてやるのだった。

『ありがとう』
『気にするなよ。それより、雨…なかなか止まないな』
『うん…』
俺と少女が出会った公園は雨宿りできるような屋根もなく、仕方なしに俺と少女は近くにあった大きな桜の木の下で通り雨が止むのを待つことにした。
俺は母親に頼まれて買ってきたばかりの袋の中から、あまったお金で買っていいと言われて買ってきた飴を取り出し、その1つを少女へと渡す。
『ほらっ喰えよ』
『いいの?』
『ああ。だから、元気出せ』
『うん…ありがとう』
『いいって』
ここではじめて彼女が笑ってくれた。
ずっと泣き顔見てた分、その笑顔はすごく可愛くて、俺は反射的に頬を染めて視線を外していた。
『サスケ。大丈夫かなぁ』
『その犬、賢い方か?』
『…わかんない。でも、お手もお座りも伏せもできるよ』
『…雨、上がったらさ。いったん家帰ってみよう。もしかしたら戻ってるかもしれないからさ』
『いるかな?』
『賢い奴なら戻ってきてるはずだよ。犬は帰巣本能高い方だから。ましてや、この近辺で逃げちゃっただけだろ?それなら、戻ってくるよ。いつもの散歩コース辿ってりゃ、帰れるだろ』
『……でも、私とサスケね。つい1週間前にここへ来たばかりなの。お散歩もまだ1週間しかこの辺り歩いてないの。お家、分かるかなあ?』
『とりあえず、雨上がったらおまえんち戻ってみよう。それでいなかったら、散歩コース探し歩こう』
『一緒に探してくれるの?』
『まっ暇だしな』
『わあっ!ありがとう!!お姉ちゃん!』
『おねっ…って!俺はこう見えても男だっての!!』
『…ふぇ〜っ!ごっごめんなさいー!!』
『まっいいけどさ。こんな髪の色に顔だから、よく勘違いされるし』
『そうなんだぁ。でも、お兄ちゃんみたいな綺麗な髪の色だったら、きっとどんなに離れたところにいてもすぐに見つけられるだろうから、お父さんもお母さんも、お友達も嬉しいよね!』
『…俺は…嬉しくないけどな。こんな花のように鮮やかな髪も、それになぞらえてつけたって言われた名前も』
『お兄ちゃん…』
--そんな寂しいこと言わないで。
あの時は気づかなかったが、たしかに俺は彼女にそう言われてたんだ。
--自分を嫌いにならないでと…