詩2

「自分を嫌いにならないで…か。今、思うと本当アイツらしいこと言ってくれたよな」
あの少女とこの公園で会ったのはあれっきりだった。
少女の家にも行ったが、どうやら彼女は親戚の家に1週間ほど春休みを利用して家族と一緒に遊びに来ていただけだったらしい。
あの時、無事に戻ってきたあの大きな犬も少女の面影さえも、そこにはもうなかった。
けど---。

「わんわんっ!」
「おっと!」
「こらっ!サスケーッ!!って…きっ霧野先輩」
「なんだ?天馬。またサスケに逃げられたのか?おまえ、握力なさすぎだろ?もっとしっかり捕まえておかないとダメだぞ。いくら相手が年寄り犬だからって」
「違います!俺のせいじゃないです。サスケが霧野先輩を好きすぎるのがいけないんです!」
「なんだよ。それ、犬へのヤキモチか?」
「ちっ違いますよ!おっ俺、霧野先輩と同じ男なんですよ!なんで、俺が霧野先輩相手にヤキモチなんか…」
「とか言いながらさ、おまえ顔真っ赤」
「んなっ?!」

あの日と同じ、この場所で桜咲く頃。
俺は再び思い出の少女と再会した。
彼女は俺のことまるで覚えてない風な素振りをしてみせたけど、それはきっと彼女が人には明かせない秘密を今、ここに抱えているからだと思っていたい。

「そうだ!霧野先輩。ちょっと手を出してもらえますか?」
「え?こうか?」
「はい!」
「おっ…これって」
「えへへ〜!俺のお気に入りの飴なんですよ」
「へえ、奇遇だな。これ、俺も好きなんだぜ」
「そっそうですか…」
サスケのリードをしっかりと手に握りなおしながら、天馬は空いてる方の手をポケットへと突っ込んで、飴玉を一粒俺の掌へと転がした。
それはあの時、俺がこの木の下でまだ女の子だった天馬へとあげたものと同じヤツで---。
「「覚えてたんだ」」
おもわず同時に呟かれた独り言に、こっちは苦笑し、あっちは顔を真っ赤にして口を噤んで視線を逸らす。
(ホント、いつまで隠し通すつもりなんだか…)
飴を口に含みながら、ふと頭上を見上げれば、天から降り注ぐ桜の花弁。
「綺麗ですよね…」
「そうだな」
「俺、こういうピンク系の色、好きだなぁ」
「俺も好きだよ。今はさ」
--自分のこの目立つ髪色も…好きな人がすぐに俺だと分かる色だというのなら。
ぼそりと呟いた独り言に天馬が気持ち小さく笑いかけてくれたような気がした。
「俺も…あなたのその髪色、大好きですよ」
ふわりとそよ風が俺の髪と桜の花弁を揺らしていく。
天馬の口からこぼれた素直な言葉は、いつか直接俺の耳に届けられるのだろうか?

--今はまだ、無理なのかもしれないけど。
いつか…
この手をもう一度キミと繋げますように---。

-end-

あとがき---

ようやくできたよ!蘭天企画さまへ送るヤツ!
結局蘭天♀復活記念ものになっている…
私的に蘭天(♀も)はこれくらいの距離が一番好き。
そして自然と恋人になっていくといいよ!
自分で書くレベルならこの範囲。
他人さまのは自分では表現できない甘さがあるから、甘いの上等!なのにね。
主催者さま、遅くなりましたがどうぞ企画盛り立てに一役買わせてくださいませ。
これを機に蘭天スキーさんが増えますことを!
そして蘭天スキーさんとの友達の輪を広げたい!!と思うのです。
参加させていただきありがとうございました。