黒猫徒然


愛玩パロ
2014/01/16 19:36

注意!夕陽が完全に女性で、NLです。それでもよいというかたはどうぞ。





自室の、内線電話が鳴った。
本片手にソファに座っていた珪祥は、眉間に皺をよせ受話器をとる。


「珪祥、お前今ひまだな」


「は?」


「暇だろう?いや、暇だな」


「・・・・一体何の用ですか、英祥兄さん」


珪祥の一回り以上年齢の離れた長兄の英祥の言葉に、いつもながら珪祥は溜め息をつきながら訊ねる。
一回り以上年齢の離れた長兄は、頼みがあってな、と殊勝な様子もなく珪祥に言う。


「美乎の友人が来てるんだが、お前最寄り駅まで送っていってくれないか?」


何を言い出すのかと身構えていた珪祥は、長兄にしては全うな頼みに、些か驚く。


「義姉さんのですか?」


「ああ。と言っても、まだ高校生だが。美乎が茶道部のOGとして母校に行ったときに知り合った女性で、それから美乎と親しくなったんだ。どことなく雰囲気か似ているせいか、美乎が気に入っていてな。彼女のほうも美乎を慕ってくれて美乎の体調も気遣ってくれる。俺も何度か会ってるが裏表のない、穏やか人柄のお嬢さんだ。俺も気に入っている」


洞察力に長け、一瞬にしてその人間の本質を見抜く兄の眼力にかなったというならば、間違いないのだろう。それに、体が弱い義姉がその女性を気に入っており、態態自宅に呼び寄せているとなれば、珪祥にとっても喜ばしいことだ。外出もままならない義姉を気遣い家を訪ねてくれるというのだから。恐らくは兄も珪祥と同じ考えのはずだ。


「美乎も彼女が来てくれると、調子が良くてついつい長居させてしまったんだ。こんな時間に、こちらの都合で遅くまで居てくれた彼女を、一人帰すわけにはいかないだろう。俺が送っていけばいいんだろうが、生憎俺はこのあと予定があって出来ない。誰か家のものに送らせようとも思ったが、お前なら弟だし、彼女もあまり気を使わんだろう。駅まで送っていってやってくれ」


「わかりました。直ぐに支度します」


「頼んだぞ」


受話器を置いた珪祥は、車の鍵を持ち出しながら、しかし、と穿った考えをする。
義姉と兄は、その女性を気に入っているようだが、千寿の名とその財力の恩恵を受けようとするしたたかで、策士の人間もいる

義姉のためにも、その女性が妙な思惑と下心のない人物であることを願いたいが、場合によってはそれとなく釘をさしておいたほうがいい。そればかりでなく、純粋に際立った容姿の長兄に惹かれよからぬ想いを抱いている可能性もある。義姉は、長兄ほど容姿は秀でておらず、既婚者である長兄にしゅうはをおくる女性は少なくはない。
コートを羽織り、自室を出た珪祥は玄関に向かう。
玄関とはいえ、ホールのようなつくりをした来客のために置かれた長椅子に、義姉と高校の制服を着た少女が座っている。義姉のすぐそばには兄が付き添っており、少女の後ろ姿ごしに見る義姉は楽しげに会話をしていた。
珪祥に気付くと、兄は深海さんと少女に声をかけた。


「うちの不肖の弟です。丁度駅の方面に用事があるというので、こいつに送らせます」


兄の言葉に、深海と呼ばれた少女が振り返った。
確かに義姉に似た雰囲気の、取り立てて特徴ない面立ちの少女だった。澄んだ瞳が珪祥を見る。


「深海夕陽です。すみません、あの御迷惑ではないでしょうか」


長い髪が肩からこぼれ、申し訳なさそうに眉をひそめた夕陽に、千寿は作り物ではない本物の笑顔で答える。


「いいえ、気にしないでください。兄の言う通り、今から出るところでしたから」


「珪祥さん、ごめんなさいね。夕陽さんをよろしくお願いしますね。気をつけて」


「はい、義姉さん」


「頼んだぞ、珪祥」


「夕陽さん、またいらしてくださいね」


「はい」


嬉しそうに、頷いた夕陽は手をふる義姉に手をふり返し、珪祥のあとに続いた。





用事を済ませ、帰宅した英祥は既に帰宅していたすぐしたの弟の禎祥を自室に招き、メイドに用意させた酒を酌み交わしていた。


「義姉さんに、親しい友人が出来るのはよいことですね。兄さんの話を聞くと人柄も良いようですし」


「ああ。そうだ、今度来たときには樹梨衣さんも会うといい。きっと気に入るぞ」


「話しておきましょう。珪祥に駅まで送らせたのでしょう?それにしては帰りが遅いですね」


「あいつのことだ、どこかでのんでるか、誰かに声でもかけられたんだろう。好みから外れなければ来るもの拒まず去るもの追わずだからな」


「兄さんのほうが、珪祥に輪をかけて酷いものでしたよ」


「はは、そうだったな。今は美乎一筋だぞ」


「ええ、そうでしょうとも」


禎祥が頷いたところで、英祥の自室の扉がノックされた。
いらえを返すと、珪祥だった。


「兄さん、ちょっといいですか、禎祥兄さん」


コートを羽織ったまま、自室に戻らずどうやら直で英祥の部屋を訪ねたらしい珪祥は次兄にも軽く頭を下げる。


「遅かったな、珪祥。どうした、ちゃんと深海さんは駅まで送ったのか?」


「ええ、駅ではなく自宅まで送ってきました」


珪祥の言葉に、その兄である二人は意外そうに眉をあげ、あるいは揶揄する。


「何だ、お前も深海さんを気に入ったのか?」


笑みを浮かべながら珪祥は頷き、その笑顔のままで告げる。


「このままハンドルをきってホテルに連れ込みたいと思ったほどには」


ぶは、っとグラスを傾けていた禎祥が盛大にむせる。ごほごほと空咳を繰り返す禎祥はお、お前とむせながら弟に詰問する。


「まさかそんなことはしてないだろうな」


「していませんよ。今日はきちんと自宅まで送り届けてきました」


「珪祥」


「はい、何でしょうか英祥兄さん」


「深海さんは美乎の大事な友人だ。お前の気まぐれか遊びでかは知らんがもしそうなら相手を変えろ。お前のせいで、美乎との間に何かあったらどうする」


「兄さん、心配してくださらなくても俺はそんなつもりはありません。本気です。強引な手も使うつもりはありません。ですから兄さん、また義姉さんが深海さんを家に呼ぶときには、俺に知らせてください。連絡先をききたかったんですが、初対面の男には教えてくれないだろうと思いまして


「それで、自宅まで送ったわけか」


「駅まで送るなら、自宅まで送ったほうが安心だと言いくるめたんです。どうも男に対して免疫がないのか性格なのか、少し素直すぎるようですから、妙な虫がつく前になんとかしたいですね、女子高で本当に良かった」


空咳を繰り返していた禎祥が、清々しいほどの笑顔の弟に忠告する。


「珪祥、深海さんは高校生、まだ十六才だぞ。どうなるかはまだわからんが、成人した男が未成年を相手にするなら気を付けろ」


「英祥兄さんが義姉さんと知り合ったとき、義姉さんも未成年でしたよ。今時分珍しくもないでしょう」


会話を聞いていた英祥は、確かにと笑いながら同意する。


「分かった。お前がそこまで言うなら本気なんだろう。深海さんが来るときには教えてやる。ああ、自宅まで送ってるなら送迎をしてやればいい。あとは自分でなんとかしろ」


「はい、ありがとうございます英祥兄さん」


「頑張れ。お前も飲むか?」


グラスをあげながら尋ねると、珪祥はいいえ、と兄の申し出を断る。


「まだレポートが終わっていないので俺は結構です。では兄さんよろしくお願いします」


英祥に頭を下げ、珪祥が部屋を出ていく。
前髪をかきあげながら、英祥は予想外の展開だな、と気難しい顔をするすぐしたの弟に同意を求めた。


「俺はお会いしたことはありませんが、深海さんは珪祥の好みとは違うような気がしますが。それに深海さんは一般家庭出身なのでしょう?珪祥にはもっと良い家柄の女性のほうが」


「お前がそれを言うな、禎祥。樹梨衣さんもそうだろう。それに、珪祥と深海さんを引き合わせたとき、あいつの目の色が変わったし、態度もいきなり変わった。気に入ったようだ、とは感じたがまさかな。あの様子だとなりふり構わず相手が女子高生だろうが本気でてに入れようとするだろうさ。暫くあとには義理の妹が増えそうだ。親父にも報告しておくか」


「そのようですね、しかしあの珪祥の目は、どこかで見た覚えがあります。ああそうだ、兄さんが初めて義理さんと会ったばかりの頃の目によく似ていますね」


「俺もだ。完全に目が据わってた。あれは外野が何を言っても意志を曲げんだろう。お前が樹梨衣さんを、婚約者から奪いとる前も、あんな目をしていたぞ。俺がやめておけ、と忠告しても頷かなかった。俺もお前も、あいつのことは言えないさ。せいぜい、兄として応援してやるぐらいだ」


「そうでしょうね。珪祥はいざというときには兄さんよりも行動力がありますから、少し心配です」


「何かしたとしても、自分で片をつけるだろう。前祝いといくか?あいつの結婚の


「飲み過ぎると義姉さんが心配しますよ」


兄の掲げたグラスに、禎祥はグラスを合わせる。
新たに増えるだろう、義妹に早々に会ってみようと思いながら。



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comment


2014/01/21 11:47
from ( )


どうなっていくのか、すごい続きが気になりますー!
愛玩シリーズ大好きです!

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2014/01/17 23:09
from ( )


夕陽(男)にはかなり強引に、しかも内心かなりゲスいかんじでしたが、夕陽(女)にはどうせまるのか気になります<br />
<br />
千寿視点で読んでみたいです

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