■ 目の前に青い春


「じゃあみんな、今日も一日がんばってね!いってきまーす」

いってらっしゃーいと隊士たちに送り出され、少女は真選組屯所の門をくぐって町へと出た。
膝上10cmのスカートを翻し、少女は走って学校へ向かう。急がなければ、朝練に遅刻してしまうのだ。副部長が遅刻というのは後輩にも示しがつかないのでいただけない。
少女の名は美結。『真選組局長近藤勲の妹』という肩書きの持ち主。彼女はこの春、無事高校三年生に進級した。現在ぴっちぴちの17歳。すばらしきかな、華のセブンティーン。

「あ!おはよう十四郎さん!」
「おー美結、おはよう」
「朝帰りお疲れ様!今回の敵娼さんはいい人だった?もしお付き合いするようになったら一番に私に紹介してねー」
「お前なぁ…ガキが生意気言ってんじゃねぇや」
「あーまたそうやって子供扱い!女子高生はね、もう子供じゃないんですぅ」

朝からテンションの高い少女の、セミロングの髪が朝の風に漂う。
銜えていた煙草を携帯灰皿に押し込んだ土方は、そんな彼女の笑顔をまぶしげに眺めた。

「…ガキ扱いされなくなったらされなくなったで文句言うだろてめぇは」
「あはははっまあね!じゃあいってきまーす」
「…ってらっしゃい」

見えそうで見えない。そんな女子高生の不思議なスカートを目に留めながら土方十四郎は朝から元気な妹分を見送った。
そして自分の携帯で現在の時刻を確かめる。―――午前7時。
あいつはまた今日も楽器の練習か、毎日毎日よく飽きもせずラッパばっか吹きやがるぜ。

「まぁそれも、あと三ヶ月で終わりっつったかな」

美結は高校に入ってすぐ吹奏楽部に入部した。それまでは刀を振るか本を読むかぐらいのことしか知らなかったのに、トランペットを手にした途端その生活が180度変わった。毎日どこかキラキラと輝いている。ああこれが青春ってやつか、と思わせる。

「…はー…俺もがんばるか」

今日も無事、朝からあれの顔が見れてよかった。



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