小説(クリパー) | ナノ


只今の時刻は8時を5分過ぎたところ。


五条くんのゴールド騒動も落ち着き、源田くんが買ってきたド派手なパーティー用の帽子を無理矢理被らされ、私達は各々好きなことをしながらまだ来ていない二人を待っていた。

成神くんは何となく予想してたけれど、大野くんが遅刻だなんて珍しいから些か心配になる。事故とかに遭ってないと良いのだけれど。



「すみませ〜ん、遅れました〜」

「遅いぞ成神!!今何時だと思ってるんだ!」

「(たった数分遅れただけじゃん)だからすみませんって」

「謝れば何でも許されると思うなよ!成神、そこに直れ」

「佐久間先輩、ウザいっす」



全く詫びれた様子のない成神くんが現れたのはあれから更に数分後。
一目見た瞬間、あまりの格好良さに一瞬言葉が出て来なかった。



『な、成神くん……凄く格好良い…!!!』



まるでファッション雑誌からそのまま飛び出してきたかのような素晴らしさ。上から下まで完璧なまでのコーディネートに感動すら覚える。
色の組み合わせといい小物の使い方といい、まさにプロの犯行である。トレードマークのヘッドフォンも心なしか一段と輝いて見えた。

先程まで奇抜ファッションが続いたということもあってか、成神くんは誰よりも輝いて見えた。
こんなに格好良いのに私より年下だなんて信じられない。



『成神くんは前々から洒落っ気があるとは思ってたけど、まさかこんなに格好良いなんて…!』

「あっ、名字先輩!!うわー!先輩の私服姿初めて見ました!可愛いですね」

『えっ、あっ、ありがとう…』

「照れてるんですか先輩?顔赤いですよ。ま、そーゆーところも可愛いから好きなんですけどね」

『、っ――〜!!』



いつもと雰囲気の違う成神くんに褒められて鼓動が高鳴る。
成神くん、その笑顔は反則。格好良すぎるから。



「なに成神?遅刻したくせに名字先輩口説くなんてさ。ちょっとは言動を慎みなよ」

「なんだよ洞面、羨ましいなら素直にそう言えばいいだろ。まあ言ったところで俺は譲歩してやる気なんて更々ないけどな?」

(あれ、気のせいかな…二人の周辺の空気が急に重くなったような……。確かこの二人は仲良かったはずなんだけど)



私を間に挟んで火花を飛ばし合う二人に苦笑するしかなかった。
口では散々言っているのに笑顔な辺りがまた恐ろしい。私の周りををただならぬ空気が支配した。

触らぬ神に祟りなし、ということなのか、一年生らしからぬ迫力を前に他の人達は少しずつ距離を空けている。
ちょっと、助けてよ!そんな想いを込めて皆をじっと見詰めるものの、目が合った瞬間悉く逸らされた。皆、後で覚えてろ。



『そ、そういえば大野くん遅いね』

「あぁ、誰かいないと思ったら大伝か」

『咲山くん、気付いてなかったの…』

「さっき連絡が入って、迷子になっているらしいから鬼道が迎えに行ったぜ。多分そろそろ帰って来るんじゃないか?」

「この年で迷子って…先輩どんだけ」

『はは、確かに…』



迷子の大野くんを思い浮かべて再び苦笑した。
あの大野くんが街中をキョロキョロしている様を想像すると、なんだか可愛く思えてしまう。


噂をすれば何とやら、大野くんの話をしていたらリビングの扉を少し開けて鬼道くんが頭を覗かせた。
迎えに行った鬼道くんが帰って来た、ということは必然的に大野くんも来たということになる。



「皆、大伝を連れてきた」

『お迎えお疲れ様、鬼道くん。何してるの?早くパーティー始めようよ!』

「あ、あぁ…」



しかし帰って来た鬼道くんはどこか様子がおかしかった。
心なしか焦っているような…笑いを堪えているようにも見える。

私が声を掛けるとやっと鬼道くんは扉の向こうから姿を現し、続いて大野くんがやって来た。



「大伝!!お前本当に遅い…ぞ!?」



刹那、佐久間くんの顔が驚愕に染まる。

他の皆も何か言いたかったみたいだけど、いざ大野くんを目の当たりにしたら言葉が出なくなった。

それもそのはずである。



『大野くん、その格好……』

「だ、大伝…おまっ……ブッ」

『っなんで笑うの辺見くん〜!!』

「大伝その格好マジうけるー!!」

「あははははっ!!ちょ、こっち見ないでください先輩!ははははっ!!死ぬ、笑い死ぬ!!」



遂に堪えきれなくなった辺見くんが吹き出したのを皮切りに、場にいた皆が一斉に大爆笑した。
あの鬼道くんですらも一緒に笑っている。


大野くんはあろうことか、頭にはどう見ても百均で購入したであろうバンダナを巻き、女の子のキャラクターがプリントされたピンクのタオルを首に掛け、プリ○ュアのイラストが描かれた明らかにサイズ違いのタンクトップを着て、背中にはポスターが刺さった黄色のリュックサックを背負って現れた。
まるで裸の大将とオタクが共存しているかのような光景に全員が目を見張った。

しかもとどめに…



『ぶはっ!ナ○キの靴下…!!』

「ダセェ!小学生じゃあるまいし、ナイ○の靴下とかマジダセェ!!」

『ダサい!確かにダサいけど、そういう寺門くんの短パン姿も大概ヤバいから!!お願い自覚して!』



なんと彼の靴下はまさかの○イキであった。

あまりにインパクトがありすぎるそのファッションに全員がお腹を抱えてのたうち回る中、大野くんだけが状況に着いていけずに「何故オレのベストファッションを見て笑う!?ウガー!!」と声を荒げた。
大野くんはベストファッションと言ったけれど、ユニフォームで来られた方がまだマシだったと私は思う。



「な…何はともあれ、これで全員揃った。クリスマスパーティーを始めようか……ブッ、ははははは!!」

『そうだね…(お腹が…!!お腹がはみ出てる!服の役割果たしてないよあれ!!)』



鬼道くんが開始宣言をするものの未だ笑いの絶えない私達。


格好良い人から可笑しな人まで、幅広い個性が集結してしまったこのクリスマスパーティー。果たしてどうなるのだろうか。
不安と期待が入り乱れる中、予定より約15分遅れてパーティーは賑やかに始まった。

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