ジータ

本日の依頼も無事に終了し、艇へ戻って自由時間となったものの、なんだか動いていないと落ち着かなくて艇内をふらふらとしていると甲板で名前さんを見つけた。私たちが旅を初めてすぐに出会った名前さんだけど、いつも笑顔な彼女は物憂げな表情をして何かを考えている様子だった。ちょうど今日はポートブリーズ周辺での依頼だったせいか風も強く、儚げな雰囲気の彼女は目を離した好きに攫われてしまいそうな錯覚を覚える。

「名前さん、ぼーっとしてどうしたの?」
「!ジータちゃん、」

思わず声をかけると名前さんは驚いた様子で顔をあげた。元々彼女はあまり気配に敏感な方ではないと思うけれど、それでも近くに来ても気づかれないなんて相当頭を悩ませているらしい。これがもし恋愛の悩みだったりなんかしたら。なんてふと取り留めもないことを考えて、いるかもわからない相手に嫉妬してしまうくらい私は重症みたいだ。

「何か悩み事?団長の私に、よかったら話してほしいな」

彼女は謙虚で、それでいて私より何倍も大人だから。始めの頃は何か悩んでいる様子でも上手くはぐらかされてしまうことばかりだった。それでも負けず嫌いを発揮してめげずに声をかけ続け、最近では少しふざけた調子で尋ねてみると困ったように笑った彼女が悩みを相談してくれるのが定番の流れとなっていた。

「…ジータちゃん、私ね」
「他のみんなみたいに強くもないし、ローアインさんやヴェインくんみたいに美味しいご飯を作ることだってできないし」
「そのくせにみんなに囲まれるジータちゃんを見るとジータちゃんは私のものなんだって、隣には私がいたいのにって、そんな汚いことばっかり考えてる」

いつもと違い戸惑った表情を見せ、意を決したように口を開く彼女からは信じられない言葉ばかり紡がれていく。苦しそうに話してくれる名前さんに対して私の心はどんどん浮かれていって、もしかしなくても汚いことばかり考えているのは私の方なんじゃないかと思う。動揺でどこかへ行っていた意識も次第に戻って来て、つまり、これって、





片想いの終わり

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