HONEY LOVE1


誕生日ってあんまり自分のときはどうでもいいんだよな。
自分以外の大好きな人だったり親友だったりが誕生日だとめっちゃくちゃ楽しみだしテンションあがってプレゼント買ったりするけど。
でも自分のはどーでもよくて。
で、俺はどーでもいいけど、俺と同じように"俺の誕生日"だからテンションが上がる人がいるっていうのは確かなことで。

「……優斗さん」
「うん、なに?」

キッチンで鼻歌歌いながら優斗さんは明日の夕食の準備をしていた。
今日じゃない、明日だ。
明日の夜はゆっくり食事を楽しみたいからってことで今日から仕込める煮込み料理を作ってる。
えーとなんだっけ牛ホホ肉を赤ワインで煮込んだやつらしい。
牛ホホ……頬っぺたのこと……だよな?
なんかいまでも十分すっげーいい匂いしてる。
もう今夜の夕食はとっくに終わってた。

「もう向こうでゆっくりしよーよ」

夕食終えて後片付けして風呂入ってリラックスタイム!のはずなのに!
せっかく平日なのに泊りにきてるのに!

「うん。あと少しね」
「……」

大学生になって三カ月近く、高校の時よりも頻繁に優斗さんのマンションに出入りしてる。
もう半同棲ってくらいなんだけど、平日は優斗さんも忙しいし特に週初めの今日だったりは来ないようにしてるんだけど。

「……ゆーとさん」
「なに?」

鍋の中を楽しそうに木べらで混ぜてる優斗さんの顔を覗き込む。
料理してくれてるのは嬉しいけど、でも俺には手料理よりもっと大事なことがある!
だってなんでわざわざ月曜日の今日泊りにきたかっていうと―――。

「ね、俺が18歳なのってもうあと1時間くらいなんだよ? 貴重な18歳の俺を放っておいていーの?」

必殺おねだり上目遣い!で、言ってみる。
でも実際そうだ!
明日は俺の誕生日で、俺にとってはどうでもいいけど、優斗さんはなんかすっげー張り切ってて。
平日だからお互い日中は一緒に過ごせないけど夕食は一緒にね、って約束して。
プレゼントは日付が変わったときにあげたほうがいいかな、でも夕食のときケーキ食べてからがいいよね、なんてそんな俺にとってはもらえるだけで嬉しいけどどっちでもいいかなーなんてことを週末めちゃくちゃ悩んでた。
確かに祝ってくれるのは嬉しい。
でも俺は構われたい!
18歳最後の、エッチもしたい!!

「優斗さん。18歳の俺とはもうあとちょっとでお別れなんだよ?」

ま、別に19歳になったからっていきなりなんか変わるわけじゃねーけど。

「だからさ、最後の思い出つくろーよ」

もとい、エッチしよーよ。
と、ちょっと顔上げて、優斗さんの頬にリップ音たててキスした。
優斗さんは驚いたように俺を見て、

「……そっか18歳最後……」

ってボソボソ呟いてる。
優斗さんって……真面目だし優しいけどたまにすっげー天然くさいときあるよな。

「ね、優斗さん、寝る準備して寝室行こうよ?」

ダメ押し!と、もう一回必殺上目遣いで見上げて今度は唇にキスした。
これでどうだ!!
って内心すっげー念じながら優斗さんを見つめる。

「……そうだね」

ようやく優斗さんは煮込むのをやめてくれて、俺の頭を撫でると手を握ってきた。

「誕生日前日だもんね、ゆっくりしよう」

にっこりと笑って、今度は優斗さんからキスしてくれた。
―――っしゃー!!
心の中でガッツポーズしてウキウキな俺と優斗さんは歯磨いて寝室へと向かったのだった。

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