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「今日、恋文の日なんだってー!」
「へー! そうなんだ!」
「みんなで書いてみようよー」

教室で実優ちゃんたちがテンション高く騒ぎながら「可愛いレターセット持って来たんだー」なんて言ってたくさんの色ペン使ってなにか書きだしてる。
恋文、ってラブレターだよな?
実優ちゃんはともかく、七香とかラブレターって柄じゃねぇだろ。
パックのコーヒー牛乳飲みながらその光景眺めてたら羽純ちゃんと目があった。
途端に満面の笑みを向けられる。
いやーな予感がするけど目を逸らす……のも後が怖いからヘラって笑って返した。
にこにこ笑顔な羽純ちゃんは俺から実優ちゃんたちに視線を流してそしてなんか喋り出す。
そしてちらちらと俺に向けられる実優ちゃんたちの視線。
……すっげぇイヤな予感しかしねぇんだけど、マジで!!
ふらり教室を出ていってしまってる和が早く戻ってこないかなー、探しに行こうかなーって思ってるうちに実優ちゃんたちが笑顔で俺に近づいてきた。

「なーつくん」

実優ちゃんが声をかけてくる。
その左右に羽純ちゃんと七香。

「……なにー?」

なんか怖いんだけど……。

「今日さー、恋文の日なんだってー。あんた知ってた?」
「そうそう。恋文なんてロマンティックだと思わない?」

七香が言って、それに羽純ちゃんが続く。

「……そ、そうだね」
「ね! 捺くんも書いてみない?」

そして実優ちゃんが満面の笑みで言った。
両隣の羽純ちゃんたちも異様なほどに満面の笑み。

「……な……にを」
「「「恋文!!」」」

見事に三人でハモってくれた。

「……え。なんで」
「恋文なんて珍しいものもらえたらすっごく喜ぶんじゃないかな」
「恋文なんてなかなかもらえないもんねー。ああ、でもモテそうだしラブレターいっぱいもらったことありそうだけど」
「ぜーったい、嬉しいと思うよ! 捺くんも書いてみようよ! ゆーにーちゃんに」

女三人が拒否はあり得ない、って感じの笑顔で俺にレターセットを差しだしてきた。

「……」

マジで、なんて言う俺の掠れた声は聞きとってはもらえずに。
俺は実優ちゃんたちに手をひっぱられて、椅子に座らされると三人の監視のもと―――恋文を書くはめになったのだった。

……つーか……一体なに書けばいいんだよ!!


***

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