Sweet Birthday 5


「ロウソク、俺立てるね」
「ありがとう」

ダイニングテーブルに持っていってロウソクを立てる。
ロウソクっていっても数字キャンドルだ。
2と9をスポンジにさす。
数字見るとマジで一回り上なんだなぁって実感。
ライターで火をつけて、部屋の明かりを消した。
オレンジ色の火とケーキにテンション上がってきてワクワクしだすのって俺ガキすぎ?

「歌、歌うね!!」

誕生日って言ったらやっぱアレだろ!
ハッピバースデ〜♪ってお決まりのバースディソングを歌って、

「ハッピーバースデー優斗さん!」

歌い終わって、次は火を消す―――って見てたら目が合う。
歌ってるときは全然気づかなかったけど、なんか、なんかすっげぇ優しい目で優斗さんが俺を見つめてて。
やばい、なんか恥ずかしさと、妙に緊張して心臓が跳ねた。

「ゆ、優斗さん、火!」
「うん」

ドギマギしてんのを誤魔化すように言って、で、優斗さんが一瞬目を閉じて火を吹き消した。

「おめでとう!」

大きく拍手すると、ありがとう、って嬉しそうな声が返ってくる。
リモコンで照明をつけて、すぐにプレゼントを差し出した。

「これプレゼント! でも、あのいま金欠でたいしたもんじゃないんだけど……」

優斗さんは目をしばたたかせると満面の笑みを浮かべて受け取ってくれた。
ラッピングを解く間も、まじで金なくって、なんていい訳しまくりなダサい俺。

「一応、優斗さんに似合いそうな落ち着いたデザインの選んだんだ。……俺の好みでだけど」

シンプルなダークグレーのとブラウンの柄もの。
優斗さんが手にとって見てるのに緊張しちまう。
気に入ってくれるかな?
ソワソワしてるとハンカチから俺に視線を移して微笑んだ。

「すごく気に入ったよ。ありがとう。大事に使うね」

遠慮とか嘘とかなさそうな笑顔にようやくホッとする。
へらって笑い返したらきちんと箱にハンカチをしまってから俺を呼んだ。

「捺くん、こっちきて?」

手招きされて戸惑いながら優斗さんの傍に立つ。と、手をひっぱられて膝の上に座らせられた。

「本当にありがとう」
「……え、と、いや」

なんでしどろもどろなってるんだよ。
何回もお礼言われると照れる。それに俺を見つめる優斗さんの眼差しがすっごく優しくて甘くって。
なんか、ほんとよくわかんねぇけど、なんか、目を合わせるのも変に照れて。

「……っ」

って、思ってる間に首に手が回って少し引き寄せられて、唇が塞がれた。
食事の前にキスしたときよりも、背筋がぞくぞくする感じ。
ぬるり、とざらついた舌が交り合うたびに頭の中が熱くなってく。
角度を変えどんどん深くなってくキスは優斗さんが主導権を持ってて俺は翻弄されるまま舌を動かす。

「……やばい」

俺の気持ちをそのまま代弁した言葉は、でも俺じゃなくって優斗さんからこぼれた。

「なに、が……?」

吐息がかかる距離で優斗さんが笑って俺の背中を撫でる。

「送りたくなくなるなぁ……って」
「……」
「捺くん」

泊まっていかない?
優斗さんが囁いて、至近距離で見つめ合う。
だけどすぐに優斗さんは苦笑するように目を細めて口を開きかけた。
だから、慌てた。慌てて頷いた。

「と、泊まる! 友達んち泊まるって言えば全然大丈夫だから。うち放任主義だし、だから、まじで大丈夫……」

だってさ、会って二回もこんな中途半端に終わっちゃうとか耐えられねぇだろ。
それに―――優斗さんの誕生日だし、ひとりで過ごすよりふたりのほうがいいだろうし。
だから、平気だよ、ってもう一回言って、視線絡ませて自然と顔寄せ合ってまた唇触れ合せた。
今度は中断されることもなく、身体は熱くて頭ん中は溶けそうになるくらいキスを続けた。

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