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「っ…!」
散々昨日の夜キスはしたのに、なんでいまこんなにも恥ずかしいんだろう。
「で、身体は大丈夫?」
「……大丈夫です」
「そ? 昨日イったあとすぐ寝ちゃったから、俺寂しかったよ」
昨日……。
思い出して顔が一気に熱くなる。
できれば思い出したくない、けど、最後は俺が強請ってシてもらったんだ。
「意外に体力ない?」
「……そんなことないです」
「そう?」
「そうです」
からかうように顔を覗き込んでくる智紀さんから顔を背ける。
―――昨日は立て続けに3回も……あれだったし飲んでたからすぐに寝てしまっただけだ。
「じゃあもう元気?」
「はい」
「なら」
ぐっと腰に手を回されて引き寄せられた。
目前に迫る綺麗な顔。
その目は昨日の夜見てたのと同じ目をしていて、俺は背筋に冷や汗が伝うのを感じた。
「シャワー浴びる前にもう一回汗かこうか?」
「……え? いや、い―――……っん」
拒否の言葉は智紀さんの咥内に吸い込まれてった。
そして脱力してしまうくらいに濃厚なキスをされて、囁かれた。
「あとで連絡先教えてね?」
驚く俺の口をまた塞いでくる智紀さん。
なんで連絡先?
だって一夜限りだろ、という想いも全部飲みこまれ、朝だっていうのに散々イかされて―――最終的に俺の携帯には智紀さんのアドレスが登録された。
***
「タクシーで帰れば?」
「いいです」
ラブホテルを出たのは昼を過ぎたころだった。
そのあと昼食を食べ、いま駅前。
「そう?」
正直朝の行為で身体は起きたとき以上にガタガタだったけど、電車がある時間にタクシー使うとかない。
智紀さんも電車で帰るらしく改札を抜けたところまでは一緒だった。
だけどホームが違う。
「気をつけてね」
「……はい」
「急に腰抜けたりするかも」
「……大丈夫です」
「じゃあね」
「……はい」
"ばいばい"、とあっさりと俺に告げた智紀さんは背を向け振り返ることなくホームへと去っていった。
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