12月25日A


"ショタ捺とクリスマスケーキ作るけどうまくいかなくて泣いちゃうショタ捺。どうやって機嫌をとる?優斗がんばれ。"
"ケーキプレイはいかがでしょう?捺くんノリノリでw"


***



仕事から帰ってくると泣き声が聞こえてきた。
もう何度目かで、声だけで状況が判断できる。
だけど今度はなんだろう。今日智紀からなにか送られてきたのだろうか。
あれだけ智紀からのもらいものは慎重に食べようと話してたのに。
と、それはいまは置いておいて、まずはこの泣き声だ。
「捺くん。ただいま。どうしたの?」
リビングに姿は見えず声のするほうへ―――キッチンへと向かうと、7歳くらいの姿の捺くんが泣いていた。
捺くんのまわりにはカットされたフルーツや生クリームが散乱している。
どうやらボールごと落としてしまったらしい。
捺くんの顔にも生クリームが飛び散っている。
キッチン台には綺麗に焼かれたスポンジがあってそれだけは無事だった。
「ゆーとさん!」
大粒の涙を流した小さい捺くんが俺に抱きついてくる。
「けーき! けーき!」
「うん。ケーキ作ろうとしてたんだね。材料落としたとき怪我はしなかった? 大丈夫?」
安心させるように背中を叩いてあげるとしゃくりあげながらも捺くんは頷いた。
「ごめっ。ゆーとさんがかえってくるまでにけーきつくりたかったのに」
うわーん、と泣く捺くん。
「大丈夫だよ。スポンジはあるんだから、また生クリームを泡立ててフルーツを切って、飾りつけすればいい。ね? 俺は捺くんと一緒にケーキ作りしたかったから、まだできてなくて嬉しいよ」
捺くんの涙を拭い微笑みかけると、捺くんは目をこすりながらじっと俺を見つめる。
「ゆーとさんもけーきつくりたかったの?」
「うん、捺くんと一緒に作りたいな」
「……じゃあいっしょにつくろ!」
涙を引っ込めて笑顔になる捺くん。
「作ろうね。その前にちょっとだけ着替えてきていい?」
「うん! おれ、おかたづけしておく!」
「ああ、いいよ。それも一緒に―――」
言い終わる前に捺くんが床に転がったボールに手を伸ばそうとして、生クリームに脚を滑らせて転んだ。
ぽかんと、した捺くんの目がその一瞬後またうるうると潤みだして。
「捺くん、大丈夫! 着替えれば」
と、俺が手を伸ばして触れた途端、ボン、と音がした。
「……」
「……」
「優斗さん、おかえり?」
「ただいま」
今日は効果は短かったらしい。さっきまでの幼い捺くんはいなくて、元に戻っていた。
「うわっ、なんだこれ」
自分の惨状を見てぎょっとする捺くん。小さくなっている間のことはたいてい忘れてしまってる。
「ケーキ作ろうとして落としちゃったんだよ」
誰が、とは言わなかったけど、「あー……」と呟くからどういう状況だったのかは察したらしい。
「大丈夫?」
「んー平気」
ぺろり、と手に着いた生クリームを舐めながら頷いた捺くんがふと何かに気づいたように俺を見上げて手招きした。
「なに?」
屈みこむと汚れていないほうの手で捺くんが俺のネクタイを掴んでそっとひっぱってくる。
「優斗さん。メリークリスマス」
「メリークリスマス」
「ね、優斗さん。俺って顔にも生クリームついてる?」
「うん、ついてるね」
頷けば捺くんは小悪魔な笑みを浮かべて顔を近づけてきた。
「ゆーとさん」
「うん?」
「舐めて」
「え?」
ちゅ、と一瞬唇が触れて、そして生クリームのついた指先が口元にあてられる。
誘うような眼差しに、ぺろり、と舌を出して舐め取ると次はここだというように頬を指さす。
俺は苦笑しながらも誘われるままに頬を舐めて。
「ねー生クリームプレイしたい」
「身体ベタベタしちゃうよ?」
「優斗さんが綺麗に舐めて?」
妖艶に微笑む捺くんに俺がNOなんて言えるはずもなく。
「じゃあ……いただきます?」
「はい、どうぞ」
笑いあってそのままキッチンで致してしまったのだった。


☆おわり☆

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