閑話:にーといちごのぱんつ。


仕事から帰って「ただいまー」ともう毎日エアコンつけっぱなしの部屋に入れば「にゃぁ」と出迎えてくれるのはネコのにーだ。
今日はちゃんとネコだ。

「よお、にー。先に風呂入ってくるからなー」

にゃあ、と足元に擦り寄ってくるにーの頭を撫でてバスルームに向かった。
夏は帰宅したらまずシャワー浴びてさっぱりしてからビール片手に夕食作るのが毎日のパターンだ。
ざーっとシャワー浴びてキッチンに向かってビール取り出して飲みながら今日はなんにしようかなーと冷蔵庫の中を物色していたらインターフォンが鳴った。

「はーい」

玄関に向かうとにーもついてくる。
お荷物お届けにきましたー、と聞こえてくる声にドアを開ければ宅配便のにーちゃん。
サインして荷物受け取って発送先眺めながら首を傾げた。

「なんでこんなでかいんだ?」

ついこの前ネットでいろいろ注文した。
主ににーのが多い。人間になることが多いから洋服も増やしたほうがいいかなーとこの前一緒に見てたんだよな。
買いに出かけてもいいけど、にーの場合いつネコに戻るかもわからないし、そもそも「リョータ」しか喋れない。
しょうがないからってことでネット利用。
にーがにゃあにゃあいいながら選んだのをぽちぽちしてやったんだけど。

「にー、洋服来たぞー」

かなり大きい段ボールをリビングの床に下ろす。
にゃあ、とにーが段ボールをカリカリと掻きだして、俺はガムテープはがして箱を開けた。
開けて、明細取り出して、中身を……。

「な、なんだこりゃあ!???」

洋服は上下と下着合わせて5着分ほどだ、買ったのは。
なのに段ボールいっぱいに入ってる―――。

「い、いちご?!」

いちご柄のパンツだった。
慌てて明細みたら198円の女児用パンツ×100枚となってて。

「はぁ!? なんだこれ??」

スマホ手にとって時間外かもしれないけど明細書に載ってる番号にかけようとして、ふと思い出した。
あのとき確か選んでる途中で電話かかってきたんだよな。
そんで長くなったから煙草吸いにベランダに出て喋って……。

「ま、さ、か! にー、お前!」

ハッとしてにーを見下ろしたら。

「リョータ!」

いつの間にかにーが人間になっていたのでしたー。
いまだにどういうタイミングで人間になるのかさっぱりわからないけど、いまなったばかりのにーは全裸だ。
そして目を輝かせていちごのパンツを手に取っている。

「にー……これ、頼んだ?」

袋に入ったパンツをひとつ掴んで指さして訊くと、にーはきょとんとしたあと、わかってるのかわかってないのかにゃあにゃあ頷く。

「……そっか」

目を離したすきにぽちっとしたんだろう。一度でぽちっとできそうもないし、きっと運悪く数量が100になってしまったんだろう。
っていうか、これ返品できるのか?
100枚もいらない。
いちごのぱんつ100枚で約2万ってー!

「リョータ!」

どうにか99枚返品させてもらおうと決意してるとにーに呼ばれて「どうした?」って言いながら察す。
上目に見つめてくるにーの手からいちごのパンツを受け取って包装をといてから渡してやった。

「にゃあ!」

と、にーが嬉しそうにいちごのパンツを悪戦苦闘しながら履きだした。
服を着るのに慣れてないし、自分で着ることも難しいからいま練習中のにーは必死に自分の力でパンツを履こうとしてる。

「……」
「にゃ、にゃ、にゃあ」

床でごろごろしながらいちごのパンツを履こうと。
全裸で、いや、全裸だから履くんだけど。
いやいやいや俺は変態ではない、ショタでもない。
違う、断じて違う。
ゲイではあるが、だからといって特殊性癖を持ってるわけでは決してない!!!
ない、んだけど。

「ん、にゃあ」

白い素足にようやくパンツを片足通して、もう片方も身悶えるようにして通して。

「にゃーんっ」

お尻を上に向けてふりふりしながらいちごのパンツを引っ張り上げて。

「ん、にゃぁ」

格闘すること約3分。
ようやくいちごパンツを履けたにーはほのかに顔を赤くして息を見だしていて。

「リョータ」

俺に見せつけるようにむちっといちごパンツをまとったお尻をこれでもかとつきだしてきて。

「にゃ?」
「……」

いちごパンツなんて、女児用だし、相手はネコだし、そもそも俺はショタ好きなんかじゃ決してない、決してない、だけども!!

「うああああああ!!!!」

何故かビンビンに元気になってしまった息子に俺はトイレへと駆け込むことになるのだった。


*おわり*


「リョータ」
ちなみに。
いちごパンツを大層気にいったにーは服を着ろといってもいちごのパンツだけしか身に着けずにしばらくの間俺の精神を消耗させたのは真夏の悪夢といっていいだろう。
断じて俺はショタ好きじゃない!!!


☆おまけおわり☆

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