閑話:にーと年越し。


紅白が終わってゆく年くる年になってチャンネルをガキ使に戻した。
年越しカウントダウンになったら別チャンネルに替えるつもりだ。
ずるずると年越しそばを部屋にひとりで食べる。今年は実家は家族で温泉行くらしくて俺は帰省しなかった。
いや別にいいんだ。俺にはにーがいるし。
「なぁ、にー」
可愛いにーがいれば独り身だって寂しくないやい。と、呼びかけるけど反応なし。
こたつ布団の裾を持ち上げてテーブルの下を覗き込めばすやすやと寝ている。
「熱くないのか」
呟きながらため息。別に寂しくはないが、カウントダウンのときくらい起きてくれないかなぁ。
もしくは人間になってくれないだろうか。いやいや別に寂しくはないんだけどな。
アウトー!というテレビからの声を聞きながら傍を食べ終えてキッチンへ。
手早く洗っておつまみと焼酎のお湯割りを作って戻る。
ちびちび飲みながら年越すか。明日もしにーが人間になってたら初詣に連れていってやりたいなぁ。
にーなら振袖なんて似合うだろうな、ってアイツはオスだけども。
「……あー……俺も温泉行きゃよかったかも」
テーブルに突っ伏してテレビ見て笑って。
「にー、人間になれよー。一緒に年越そうぜ」
ちょっとだけ人恋しくて呟いてしまった。
それからもうじき新年という時間になり、チャンネルを変えた。
音楽番組にする。
MCが「20秒前」と言っていているのを聞きながら―――足裏がくすぐったくてこたつの中を覗き込む。
にーが起きて悪戯をしかけてきたのか、と頬が緩んで、
「ぎゃっ」
大きくこたつが揺れてビビると同時に、ぎゅーっとにーが抱きついてきた。
人間の姿のにーが。
「リョータ!!」
ぎゅうぎゅうと抱きついて頬をすり寄せてくるにー。
その間にもカウントダウンは進んでいて。
「―――にー、あけましておめでと」
にーの頬を軽くつねりながら言えば、にーはきょとんとしたあときっと意味なんてわかってないだろうけど笑顔で
「おめーと」
と言った。


☆おわり☆

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