one night


やばい、飲み過ぎたっていう自覚はあった。今年はカウントダウンパーティにでも行ってみようかなんて提案されて、見知らぬ人たちの熱気とともにテンションが妙にあがって新年を迎えた。ディナーからワインを二本ほど開けていたんだけど、カウントダウンのときも飲んでたし、部屋に戻ってからも飲んで、あーっと思ったときには智紀さんにもたれかかってて―――意識が。


***


「……あけましておめでとうございます……。ことしもよろしくおねがいします……」
「おめでとう。って何回目ちーくん」
酔いがさめたら千裕は卒倒するんじゃないんだろうか。俺に自分から抱きついてもう何回目だっていう新年のあいさつをしてくる。なかなかここまで酔うこともないけど、たまにこうしてデレデレな姿を見れるのが面白い。ちゅ、とキスすると千裕はじーっと俺を見つめ自分からキスしてくる。
「智紀さん……あけましておめでとう……ございます」
少し呂律の回ってない口調でキスできる距離でまた言ってくる。
「おででとう。ちーくん、そんなに新年迎えられて嬉しいの?」
笑いながらいまの千裕なら一切抵抗しないだろうことをいいことにシャツの裾から手を差し込み肌に触れる。わき腹をくすぐり背中を撫でればびくりと身体を震わせて千裕が俺の肩に頭を乗せた。
「新年……ていうか……。あの……あさって……智紀さんの誕生日だから……。だから……こうしていっしょに年越せて……あさっても祝えるから……よかったな……とは……おもってるから」
途切れ途切れにぼそぼそと呟く千裕。さすがに俺もぽかんとしてしまった。やば、最強デレ?
こんなことを千裕が言うなんて思ってもみなくて密かに感動していると、顔を上げた千裕が、
「――……来年も、いっしょに年越しして……誕生日もお祝いしたいです」
なんていう最強デレのコンボをしてきた。ここまでされて、押し倒さないなんて男じゃないだろ。
「もちろん。来年も再来年も、ずっといっしょに年越しして、お祝いしてよ。千裕」
俺の言葉に千裕は嬉しそうに目を細め、頷いた。
***
翌朝、頭痛と腰痛に撃沈してる千裕と、爽やか過ぎる目覚めの俺。何も覚えてないだろう千裕がうろんな眼差しを俺に向けてため息まじりに文句を―――。
「……来年もその次も祝ってほしいならもう少し加減してください」   
え、って驚く俺に千裕は腰をさすりながら二度寝をはじめてしまったのだった。   -


--☆おわり

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