02 ハジメテノ。


基本的に特定は作らないようにしていた。
高二の時点で過去にいた彼女は二人。
中学と高一のときにひとりづつ。
まあ彼女“以外”を含めればその限りではないけど。
それと身近には手を出さない。
他校か―――だいたいは年上。

自意識過剰という訳でもなく、わりとモテるほうだった。
その中にごくまれに勇気ある“男”も含まれていて、俺が初めて“男”とシたのは高校二年の夏だった。


***


「智紀先輩」

頬を染め俺を見上げるのは他校の一年生の篠原奏くん。
身長は俺より10cmほど引く、華奢な体つき。
まつげが長く、顔立ちは少し女の子っぽい。

『一目惚れしたんです。付き合ってくれませんか』

恥ずかしそうに、だが率直にされた告白。
大人しそうな雰囲気に―――ほんの少し感じたのは“自信”のようなものだった。
自分の外見を理解し、それを上手く活用している。
したたかさと、そして多分この子は“初めて”じゃないんだろうな、という直感。

『ごめんね。今は……』

誰とも付き合う気はない、と断った。
でも、それでも、と“泣きそうな表情を作る”奏くんに付き合いはしないが友達としてならと頷いたのは気まぐれだった。


「先輩。アイスコーヒーでよかったですか」

そうして俺はいま、奏くんの部屋にいる。

「うん。いいよ、ありがとう」

笑顔を向ければ恥ずかしそうにはにかむ姿。
両親が旅行で不在だという奏くんの家に招かれたのは真夏に出歩くより冷房が効いた室内のほうがいいだろうという理由だった。

「美味しい」

俺はなにもいれていないアイスコーヒー。
奏くんはミルクたっぷり。
よかった、と頬を染めて奏くんはちらちらと俺の様子を伺う。
―――俺、食べられちゃいそう。
そんな視線をひしひし感じながら借りてきたDVDを見る。
恋愛ものの映画は女の子が好きそうなロマンティックなシンデレラストーリー。
キスシーンでは奏くんからの視線を強く感じて、内心苦笑してたら袖を引っ張られた。
本当女の子みたいな男の子だな。

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