22 非情
「俺、好きな人できたから奏くんとセックスするのもうやめるね」
奏くんの高校の近くの公園で落ちあった。
広い公園の一角にあるベンチに並んで腰かける。
公園では小学生たちが遊んでいて、遊具のまわりで楽しげな声が響いていた。
幸い高校生の姿は見当たらない。
もっと別の場所にすればよかったかな。
でもファーストフード店というのも微妙だし、奏くんの家も遠慮したいし、そんな話長引かせる気もないからここになってしまった。
で、会って早々告げた。
こんにちは、と挨拶しあって、週末ぶり、なんて笑って。
笑顔だけど不安混じり、もしかしたって微かな希望だとか色んなものを含めた眼差しを向けてた奏くんに、そう言った。
奏くんはきょとんとしてすぐ驚きに目を見開いて、困惑に顔を歪める。
「……うそですよね」
「本当。ごめんね、奏くん」
一度振って、二度目。
ごめんね、なんかで納得してもらえるなんてことは思わないし、納得してもらわなくてもいいんだけど。
「……っ、でも、僕っ」
安いメロドラマみたいなワンシーン。
ドラマだったらなんて言うんだろう。
新しい恋を進めたり? 俺のことは忘れてくれ、なんて言ったり?
ガキの俺たちに似合う言葉ってなんだろうか。
俺からはもう特に言うこともない。
ぼろぼろと涙をこぼしはじめた奏くんは必死な眼差しで俺を見上げる。
冷たい空気に色白な奏くんの肌はほんのり赤くなってて、潤んだ瞳とあわさると可愛いなぁとは思う。
流れる涙が気の毒だなとは思う。
でもそれだけ。
「先輩……のこと、本当に……好きなんですっ」
「ありがとう」
「……そのひとと付き合うんですか? もう付き合ってるんですか? そのひとがいてもいいから僕っ」
すごいこと言ってるな、って感心する。
同時に、可哀想なことしたな、ってさすがに罪悪感。
割り切ってーなんて向き不向きがあるだろうし、奏くんは向いてなかった。
だから滅多に会わなかったんだけど、それでもセックスした回数多すぎたかな。
振り返ってみたところで一緒だけど。
「ごめんね。奏くん。付き合ってはないけど、俺、好きな相手以外どうでもいいんだ。悪いけど」
ひどいなあって我ながら思うけど、しょうがない。
「だから奏くんから連絡あっても返事ももうできない」
そういや俺から奏くんに連絡取ったのって今日が初めてだったなと気づいた。
「ごめんね」
奏くんは泣き続けて、俺はそれだけを言った。
いろんな意味合いを含めたごめんね、で、おわり。
携帯から一件連絡先が消えた。
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