夜寝る前に@


ヴヴヴヴ―――とスマホが振動する。
画面が明るく光ってそこに映し出される受信メールの一部。
発信者は弟からだった。
俺はスマホを手にとって、

「もう1時!? やばい、風呂入らねーと!」

って気づいた。
メールは見ないまま読んでた漫画放り出して着替え持って風呂に行く。
確か二時間くらい前にいい加減風呂入れってお袋に怒られたんだよなー。
家の中はもう真っ暗で、お袋も親父も寝てしまってるだようだった。
割と俺風呂好きーで鼻歌交じりに風呂に入る。
ざーっと頭と身体洗ってお湯につかる。

「あー気持ちいい〜! やっぱ一日の最後は風呂だな〜!」

風呂の中で大きく伸びをしてぶくぶくお湯の中で泡立ててみたり。
ゆっくりのんびり浸かってたら、脱衣所のほうで物音。
泥棒!?
―――なーんてことはない。
親父たちは寝てるけど、もうひとり弟の尚は寝てない。
つーか、出かけてた。
いま帰ってきたのかなーなんて思いながらバスタイムを満喫してたらガッと勢いよくドアが開いて全裸の尚が入ってきた。
まさか入ってくるなんて思わなかったからポカンとしてたら尚が睨みつけてくる。
輝く金髪に鋭い眼光。ヤンチャ盛りの弟の目力マジ強い、怖い。

「お、おかえり?」

なんで睨んでくるんだよー!

「……ずっと風呂入ってたのかよ」
「へ?」
「メール送ったの見てねぇのか。今から帰るってメールしたんだよ」
「え、あー、うん」

曖昧にへらへらと笑う。
なんかわかんないけど尚からのメールが多い。
こいつこんなにマメなやつだったんだって驚くくらいに一日に何回もメールが来る。
今日も『ダチの付き合いでしょうがなく飲み行ってくる。帰ってくるまで寝るなよ』とか学校帰りに入ってきてて。
いやお前高一だろ?
飲みってよくないよ?
なんて同じく未成年でたまに飲酒しちゃってる俺が言えた義理じゃないんだけど。
ていうかなんかなんのメールなの、とぶっちゃけ不思議。
そのあとも『うぜぇ、早く帰りてぇ』とかなんとか1時間置きくらいにメール来た。
面倒くさいから何回かに一回くらい返事する。
全部無視すると怒られるんだよな。
一体何なんだろ、尚って。
女の子相手にもなのか?
いやでもなんか遊びまくってるって噂だし、あんまり優しそうじゃないよなー。

「返事ねぇから寝てンのかって」

思ってたわ、って言いながらシャワーを浴びだす。
その様子を俺は湯船の中で見上げる。
俺と違って筋肉質なイイ身体。
部活やってるわけじゃないのに、なんで身長も体つきも、年下の尚のほうがいいのかなー。
不思議だ。
でも力強いのはいいことだ。
男として羨ましいなーっていう部分と、力持ちでラッキー!な気持ちが多いのが俺の場合。
だってこの前駅弁してもらえたし!!
恐るべし尚!
駅弁したいって言ってたらマジでしてくれるんだもんなー。
先週ラブホ行ったときのこと思い出してにやける。
尚と初めてヤったのはもう2カ月くらい前の話だ。
あれから毎日のようにヤってる。
同じ家だから……でも親もいるっつーのに、目を盗んで盛りまくってる。
俺も相当だけど、コイツもそーとー性欲旺盛なんだなー。
まぁまだ10代だし、そんなもんだよなー。
じろじろ見てるうちにあっという間に洗い終えたらしい尚が浴槽の前に立つと「退け」って言ってきた。
退け、ってお兄ちゃんが先に入ってたんだぞー!
そう思いつつ体格差もあるしお兄ちゃんだから黙って湯船から出ようとした。

「ちげぇ!」

そしたら怒られた。
なんだいったい。

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