secret U
「お前年上からもモテるのか」
「あーそれこのまえ小学校に来たときあったんだよ。そのユカさんってひと生徒会で俺たちの小学校に苗木をプレゼントーかなんかよくわかんないけど」
適当に聞いてたから、と智紀は言うが。
「じゃあお前以外にも渡したのかよそのユカちゃんは」
「さぁ?」
興味ないと言わんばかりの可愛げのない智紀の態度にコイツの行く末を憂いながらわき腹に手を伸ばしてくすぐった。
びくっと華奢な身体が震え、
「うわっ、なにするんだよっ」
と声を荒げて逃げようとする智紀をソファに押し倒した。
「小学生のガキがモテてとーぜんな顔してるからだろ」
「はぁ? してないよ……っ、て、くすぐるなって!! 変態ショタコン!!」
「あ? 誰がショタコンだ」
「紘兄だろ!」
「俺はガキはキライだっつーの」
お前以外はな、と口角を上げれば呆れた表情が返ってくる。
それが面白くて笑いながら手づくりチョコをひとつ手に取り、
「食べさせてやる。口開け」
そう言って口に咥えた。
一瞬呆けた智紀はすぐに目を見開く。
「は?! ばっかじゃねーの、紘兄! もうまじでどけろって! ジジイ!」
誰がジジイだ。
無言で睨んで、智紀の頭を固定するように掴んで顔を近づけた。
ギョッとしたように俺を見る顔が面白い。
普段澄ました顔してるのがいまは年相応のガキっぽくて笑える。
―――ギリギリ、口が触れ合わない位置でチョコを押し付ける。
至近距離で智紀が眉を寄せ仕方なさそうに口を開いた。
俺がチョコを離せば自然と智紀の咥内に落ちていく。
「どうだ、手づくりチョコの味は」
片方の頬がチョコレートの丸さに膨らんでいる。そこを指でぐにぐにつつけばイヤそうに睨みながら智紀はチョコレートを食って、
「美味しい」
とため息混じりに呟いた。
「……つーか、紘兄、最悪」
「なにがだ。これくらいのほうは女は喜ぶんだぞ?」
ああ男もな、と笑えば智紀は呆れたようにまたため息をついた。
もうすっかり大人びた表情に戻っている。
それにつまらなさと、じゃあまた―――という悪戯心が芽生えた。
「おい」
「なんだよ」
「口端、汚れてる」
トリュフについていたココアパウダーがほんの少しついていた。
どこ、と、どけて、と言ってくる智紀を無視してまた顔を近づける。
そして文句を言われる前に舌を出して、そのココアを舐め取った。
唇のすぐ端。
「―――……っ」
一気に硬直した智紀の耳元に唇を移動させて、
「―――」
言葉途中で玄関のほうが騒がしくなった。
「トモ来てんのか」
晄人の声と、そしてもうひとり友達の声が響いてきて智紀を解放してやった。
―――変態ショタ。
とうんざりした智紀の呟きが聞こえてくる。
それに吹き出しながら視界に映る智紀の赤く染まった耳をそっと撫でた。
【secret:control***END】
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