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その2


 一方の舞であるが、リテルゴルロケットのように速水の前から姿を消し家にたどり着くまでの帰り道、彼女は思いがけないチャンスが転がり込んできたことを素直に喜び、かつ感謝していた。
「千載一遇の好機とはこのことだ。今こそかねてからの計画を実行に移すべき時に違いない!」
 戦闘の時だって、これほどまでに「燃えていた」かといささか首を傾げたくなるくらいにテンションが上がりっぱなし絶好調である。周囲の目がなければ、スキップのひとつでもしたかもしれない。
 もちろん、舞にとっては十分な理由があってのことである。その原因は、あえて言うならば速水にあった。
 去年の四月からこっち、ふたりが付き合い始めてからは、それこそ毎週のように(復興作業に入ってからはそれほどでもなかったが)デートを重ねてきたが、その際の主導権は完璧に速水が握っていた。
 ――あれは不覚だった。この私ともあろうものが、我がカダヤとはいえ人の為すがままにされるなど!
 このテの話ではまるっきり自分から誘えないのが大きな原因のひとつなのだが、そのことは忘却の彼方に置く事に決めたらしい。
人間、前を向くことも大切なのである。
 それはともかく、あれこれと世話を焼かれるというのは、それはそれで照れくさくも嬉しいものであったのだが、舞には舞の主張というものもある。
 つまりこうだ。
 ふたりは恋人同士であり、そうである以上は対等であるはずで、なればこそ、たとえデェトであろうと、自らの主導において少なくとも一回は行われるべきだ、という三段論法である。
 脳内的にはまったく隙のない、完璧な論理といえる。まあ、どんな理論だって、頭の中では完璧なのだが。
 そこへ今回降ってわいたようなこの話。自らの野望(というにはあまりにもささやかだが)を達成する絶好のチャンスであるように舞には思われたのだ。
「見ておれ厚志、私とてもデ、デェトの段取りぐらい出来るのだということを、今こそ知らしめてくれるわ! 我が野望、必ずかなえてみせようぞ!」
 ……なんつーか、本当に泣きたくなるほどささやかな野望であることよ。

   ***

 あっという間に翌日。
 空は薄曇りで靄もかかっているものの、特に崩れるような気配もない。
 やや肌寒さすら残す春の空気の中を、田辺はいつもどおりの時間に学校へと向かっていた。
 と、ふと前を見ると、なにやらゆらめく人影があった。足取りがどことなく安定を欠いており、もしや酔っ払いかと一瞬不安になったが、近づくにつれて人影は見覚えのある制服とポニーテール姿へと変わっていく。それになんとなく安心した田辺は、やや歩を早めた。
「おはようございます。芝村……さん? ど、どうしたんですか、その目?」
「芝村に挨拶は……。おお、田辺か」
 田辺が目を丸くするのも無理はない。確かに目の前にいたのは舞であったが、目は真っ赤に充血し、良く見ればポニーテールもいささかずっこけており、目の下にはくまが浮かび上がっていた。
「あ、はい。おはようございます。って、一体何があったんですかっ?」
「いや、たいした事ではない。気にするな」
「き、気にするなと言われても……」
 はいそうですか、とは言えぬ雰囲気である。田辺は意を決すると、再び口を開いた。
「あの、芝村さん? もしかして何か悩み事でもあるんですか? わ、私でできることでしたら、相談に乗りますよ?」
 舞はどことなくうつろな表情で彼女の言葉を聞いていたが、そのうち、わずかに目の奥に生気がよみがえってきた。舞は周囲に素早く目を走らせ、人影がないことを確かめると、ちょいちょいと田辺を手招きした。
「?」
 訳が分からないままに、それでも素直に田辺が近寄ると、舞が半ば抱え込むように顔を寄せる。
「すまぬが、ちと話がある。ここではまずい、昼休みにハンガー二階に来てくれぬか?」
「え? はい、別に構いませんが……」
 一体なんですか? という思いを語尾ににじませながら訊ねてみるが、それに答えはなく、
「ではまた後でな。失礼する」
 とだけ言い残し、そのまま相変わらず危なっかしい足取りで立ち去っていった。
「あ……。それにしても、話ってなんだろう?」
 後ろ姿を不安な様子で見送ると、田辺は小さく首を振った。今ここで何を考えたところで、答えなど出るはずもないのだ。
 
 ちなみにこの瞬間、速水の「舞と昼食を一緒に食べる」というプランは、実にあっさりと崩壊したのであった。

   ***

 昼休み、ハンガー二階。
 かつてと違い今は士魂号がないので、今は荷物置き場程度の意味合いしかない。妙にさびれた印象を受けるここには、最近は人もほとんど来ない。
 舞が打ち合わせには最適であると思ったのも納得できる話ではあった。
 まあ、ひとつ誤算があるとすれば……。
「はぁ、つまりデートコースですか?」
 驚きを含んだ声がハンガー内に響き渡った。
 がらんとしている分、小さな声でも良く響くことまでは考慮していなかったらしい。
「しっ! 声が大きいっ!」
「あ、ご、ごめんなさい。でも……」
 小さな声で詫びが入る。
 なんのことはない、舞の言っていた「相談」とは、つまりこれであった。
 前日あれほどに喜び勇んではみたものの、彼女にしてみれば初めてデートコースを設定するわけで、正直なところ何をどうすればいいのかが全然分からなかったのである。それに、彼に対して大見得を切った手前、かつてと同じコースというのもできれば避けたい。
 そうなると、いくら頭を悩ませても答えが簡単に出てくるはずがなく、気がついたときにはすっかり夜が明けていたという次第であった。
 えらく早い挫折であるが、まあ、未体験の事柄というのはえてしてこんなものである。
「ともかく、概要については理解したことと思うが、ここはあえて恥を忍んで、無礼であることも承知の上で頼む。そなたが行ったことのあるデェトコォスを教えてはくれぬか?」
 いささか決まり悪げに、頬を染めながら舞は頼み込んだが、田辺は申し訳なさそうに答えた。
「あの、お教えしたいのは山々ですけど、私も自分で決めたことがなくって、連れてってもらうばっかりで、それに……」
 声がどんどん小さくなる。
「どうした?」
「今まで行ったところって、あ、あまり参考にならないと思います……」
「それでもいい。参考までに教えてくれぬか?」
 意気込んで言う舞に、田辺は少々困った顔になりながらもそっと手招きをした。舞は怪訝な表情のまま、それでも素直に近寄る。
 田辺は耳元に口を寄せると、ぼそぼそと話し始めた。
「……で、……とか、……です」
「ふむ……え? 何だと? う、うむ……」
 最初は神妙な表情だったが、それが驚いた表情から呆れに変わるのにさして時間はかからなかった。
「そ、それは……独創的といえばいえるが……」
 コース自体は速水が計画したものと大差はなく、もう少し違いを見せたい舞としてはあまり参考にならなかった。
 ちなみに、舞は知るよしもないが、コースの提案をしたのは速水だった。そのときに、「後は自分なりに付け加えてね」と言ったそうな。
 ――なぜ、布団干しがコォスの中に入っているのだ?
 その辺りがどうしても理解できない舞であった。
 ……まあ、普通理解できまいが。
「ごめんなさい、せっかくですが私は今回お役に立てそうにないです……」
 あまりに申し訳なさそうに謝るので、これは舞としても苦笑を浮かべるしかなかった。
「いや、よい。元を正せば私が決めねばならぬことだ。世話をかけた」
「いえ、お世話だなんて……。本当にごめんなさい」
「もうよいと言ったであろう? それよりせっかくだ。一緒に昼食でも食さぬか? 珍しくリーフが手に入ったので、淹れてきてあるのだが……」
「え? いいんですか? ありがとうございます。じゃあ、せっかくですからご一緒させていただきます」
 ――ヒントは得られなかったが、なあ、こういう時間も悪くはないな。
 舞は、弁当をつまみながらそんな事を考えていた。

 かくして団欒のひと時が過ぎていったわけでが、まさかその会話を聞いている者がいようとは、ふたりとも予想だにしていなかった。
 昨夜と同じ気配が、ハンガーの隅にたゆたっている
「ふうん。なるほど、そういうわけ……」
 なにやら女性の声で呟きが聞こえたと思うと、次の瞬間気配は揺らめくようにして消えていた。

   ***

 田辺との昼食はなかなか有意義なものであったが、結局今の課題については何ら進展を見せたわけではなかった。
 この「難関」をいかにして突破するか? 今の舞はそれに全力を集中しており、他のものなど目に入っていない。それでも授業に出る辺りは律儀ともいえるが、内容などまったく頭には入っていない。
 舞が再び気がついたのはチャイムが鳴り、授業が終わった後のことであった。
「舞、今日の仕事だけど……舞?」
 なんとか話のきっかけでも作ろうと、速水は思い切って声をかけてみるものの、舞はまったく無反応のままあっという間に外へと出て行ってしまった。
「あ……」
「なんだぁ? 速水、お前芝村とケンカでもしたのかよ?」
 滝川にしてみれば本当に何気ない――まあ、若干うらやんでいなくもないが――一言だったのだが、どこか面白がっているように聞こえたのが運の尽きである。クラスメートたちはこれから起こるであろう事を正確に推察し、黙ったまま首を振った。
 彼らとて命は惜しい。
「い、いや、別にケンカなんて……」
 予想からすれば意外なほどの抑えた反応だったが、無論滝川は気がつかない。必死になってアイコンタクトを取ろうとした者もいたが、まったくの無駄であった。
 さすが空気を読めない男ナンバーワンをほしいままにする男だけのことはある。
「隠すな隠すなって! いくらお前たちでもケンカのひとつもなけりゃ嘘ってもんさ。俺でよかったら相談に乗るぜ!」
「……そう、じゃあ仕事でもしながら聞いてもらおうかな?」
 周囲が凍りついた。全員が首筋を刃でなでられたように縮こまる。滝川がそれに気がつかないのはのは運がいいのか悪いのか……。
「げっ、仕事かよ。まあいいや、行こうぜ……、お、おい、そんなに引っ張るなって」
「まあ、いいから行こう」
 そのまま歩調を緩めることなく速水が出て行った後、残された者は大きな息を吐いた。どっと冷や汗を吹いた者もいる。ののみなど半泣き状態だ。
「やれやれ、久しぶりに見ましたね、ああなると触らぬなんとやらに、ですからね……」
 善行が額に冷や汗を浮かべつつ、眼鏡をそっと押し上げた。
 ――もっとも、われわれはあえて渦中に栗を拾おうとしているんですがね。
 いつの間にやら、眼鏡の奥に光る善行の瞳は鋭さを増していたが、それに気がついているのかいないのか、瀬戸口はののみをなだめつつ同意のうなずきを返した。
「まったく、相変わらず姫さんがからむと一変しますね。それにしても滝川は学習機能がついてないのか?」
「……滝川だからな」
「それもそうか」
 ……君たち、いいのかそれで。
 かくして滝川は、日付が変わるまで延々と仕事&速水の八つ当たり的のろけ攻撃を受けつづけることになり、ようやく解放されたときには雑巾のほうがまだまし、というくらいに疲弊しきっていたという。
 もしハンガーに舞がいればあるいは運命も変わっていたかもしれないが、彼女はとうとうその日は姿を現さなかった。
 彼女は一体、どこに消えたのであろうか――。

   ***

 時間は少しさかのぼる。
 何ら妙案も打開策も考えつかなかった舞は、浮かない顔のままハンガーに向かおうとしていた。計画は確かに大事だが、それでも整備を欠かすことはできない。かつてほどではないとはいえ、己の安全のためにも手を抜くことはできなかった。
 そのつもりであったのだが、計画はあっさり瓦解した。誰かが自分を呼ぶ声に気がついたのだ。足を止め、周囲を見回すと、校舎の影から伸びた手がおいでおいでをしている。
 誰かの罠かと疑いつつ、いつでも離脱できるようわずかに腰を落としつつ近寄っていくと、そこには原が立っていた。
 ある意味罠である。
「原か。なんの用だ? 私は忙しい……」
 なにを思ったか、原はしゃべりかけた舞の口を人差し指でそっと押さえた。瞬時に顔を赤くして固くなる舞に、ささやくような声で話し掛ける。
「ここでは人目があるわ。ちょっとこっちに来てもらえる? あなたにとって損はない話よ」
 どことなく面白がっている目に少し嫌な予感は感じたが、そう言われてはあえて逆らう理由もない。舞はしぶしぶではあったがおとなしく原の後についていった。
 原にすればしめしめというところか。

 女子高校舎の倉庫に入り込んだ原は、唐突に切り出した。
「芝村さん、今度のデート、なにやらお困りのようね?」
「なっ! そ、そなた、なぜそれを!」
 全身の毛が逆立つような感覚と共に、舞は思わず叫んでいた。猫だったら尻尾がパンパンになっていたところであろう。
 自らが敵と規定したものを葬り去るときにはおそらく眉一つ動かさないであろう舞も、根が素直なせいか、こと恋愛沙汰に関しては腹芸など遠い彼方の存在でしかない。
 それにしても、完全に秘中の秘としていたはずの情報がなぜ漏れたのか、なぜ目の前の人物はそれを知っているのか。舞の目がすっと細まるのと同時に、原の背中に冷や汗がすっと一筋落ちた。
 ――対応を間違えれば、命はない。
 原の心中に目の前の存在に対する恐怖とゲームにも似た高揚感が沸き起こる。原は外見上は落ち着いたまま、プレイヤーとして次のカードを切った。
「あら、ハンガーは私の庭も同然よ? そうでなくても二階で話したりしたら、丸聞こえになるに決まってるじゃない」
「ぐっ……。そ、それで一体、何が目的だ?」
「ああ、そんなに身構えないでよ。ちょっと渡すものがあるだけなんだから」
 ――まるで猫ねえ。
 相変わらず毛を逆立てそうなくらいに警戒している舞に、原は何冊かの本を差し出した。
「……?」
 舞は訝しげに本を受け取ると、そのうちの一冊のページを開いてみた。
「これは……?」
 そこには熊本県下の観光スポットがいくつか記されていた。
「あ、それは観光案内ね。戦争前のものだからあまり参考にならないかもしれないけど。それが熊本県の地図と交通案内」
「原……そなた……」
 原は少々照れ臭そうに笑った。
「なぁんてね。あまり私が真面目ってのもヘンよね。まあ、とりあえず持ってって。足しにはなるでしょ? それにね」
「?」
 先ほどまでの警戒はどこへやら、舞は純粋な疑問の視線を原へと向けた。
「こんなことで整備に支障が出ても困るしね。速水君、なかなか返事がもらえないからやきもきしてたみたいよ」
「……すまぬ、原よ。そなたを少々誤解していたようだ」
 後悔が波のように押し寄せてくる。どうしたらいいものか分からず、舞はとりあえず頭を下げた。だから、素直に謝罪する芝村を見て目を丸くしている原の顔を見ることはなかった。舞が再び顔を上げたときには、原はいいよとでもいうように、ひらひらと手を振っていた。
「あなたを見てると、ホント危なっかしいんだから……。で、あとはこれはおまけね」
 原は更に一冊、さきほどのよりは少し厚い本を手渡した。
「これは?」
「これさえあれば、あなたもちゃあんとデートのお膳立てができるわよ?」
 そう言って渡された本の表紙には、『ステディ攻略法 〜これであなたも彼女をゲット!〜』の文字が踊っていた。
 これは、男性用ではないかという気もしなくもない。しかも超初心者(?)向け……。
 周囲がふたりの(というより舞の)進展度合いをどう見ているか、よいバロメーターだと言えるだろう。
「あいにく女性用ってなかったのよ。まあ、そのあたりは適当に読み替えてね」
「そ、そうか……。しかし、わ、わわ私にはその、カダヤは……すでに……」
「まあ、たまには初心に帰るのもいいんじゃない?」
 また笑った原の表情は、実に素直なものだった。思わず舞もつられてぎこちない笑みを返す。なんとも言いようのない感覚が胸の中に膨れ上がり、その勢いのままに舞は行動を起こした。
「感謝するぞ、原!」
 先ほどといい今といい、原は心中驚かされっぱなしである。
 ――まあ、ただ芝村であるだけじゃない、ってのは知ってたつもりだけど……。ほんと、こういうところはかわいいのよね。速水君が夢中になるのも無理ないか。
「ただね芝村さん? あなたひとつ、大事なことを忘れてるわよ?」
 そう、確かに忘れていた。原がただ親切だけでそんなことをするわけがないということを。そしてこちらは舞の知る由もないことだが、彼女が所属している組織もまた、ただ慈善だけを目的とはしていないことを。
 ゆえに舞は、原が浮かべた笑みの裏になにがあるかまでは看破できなかった。
 それに、さらにもうひとつ。
 ――私を差し置いて恋愛事をはかろうなんて百年早いわよ、芝村さん?
 彼女があの組織に所属していることが、今なら深く理解できるであろう。

「む、そういえば……。世話になりついでですまぬが、原よ、そなたが勧めるコォスなどあれば教えてくれぬか?」
「私? そうねえ……」
 まさかそこまで素直に聞かれるとは思っていなかったのか、原は少し目を丸くしながら考えた。と、そこで先のとがった黒い尻尾がひょいっと顔を出す。
「私なら、こうかしら……」
 表情だけは真面目なまま、原は考えを口にした。
「色々凝るのもいいけれど、あなた達も付き合い始めてもうすぐ一年でしょう? その間に行った思い出の場所を訊ねてみたらどう? で、一日の最後に一緒に食事でもしながらいろいろと語り合ってみるのなんてどうかしら?」
「な、なるほど……」
 舞は脳内のメモ帳に必死に今の言葉を書きつけた。それが多くの場合はかつて速水の提案したコースをなぞるであろう、という事については考えが及んでいない様子だ。
「で、あとはね……」
 うっすらと笑いを浮かべながら、再び顔を近づける。
「続きがあるのか? ふむ……、え? ……!!」
 なにやら原がこしょこしょとささやいていくと、舞は耳先までじゅわ〜っという勢いでみるみる真っ赤になり――
 大きな音と共に、盛大にその場にぶっ倒れた。
「あらら……、芝村さん、大丈夫?」
 原に抱きかかえられるように起こされた舞の頭の上には、士魂号が乱舞していた。
 ……原さん、あなた一体、何を言ったんですか?

 それからしばらくして、朝よりもいっそう怪しげな足取りで立ち去っていく舞を見送った原は、前を向いたまま小さな声でつぶやいた。
「若宮君」
「はっ、ここに」
 校舎の影の中に、さらに濃い闇がわだかまり、それが静かに答えた。
「後は任せたわよ。分かってるわね?」
「お任せください、素子さんのためならこの若宮、たとえ火の中水の中……」
「……それはいいから、早く行きなさい」
 わずかな気配の変化があった。闇の中から若宮がぬっと姿を現したかと思うと、この巨漢がどうやって、というぐらいに静かな足取りで舞を尾行していく。
 スカウトの原義は「偵察兵」であるという事を思い出させる良い証拠である。
 原はそれを見て、満足そうに微笑んだ。


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