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『今日も見事に混んでるな、購買は』

「ああ、そうだな。んで、今日は何がいいんだ?」

『ピザパン!』

「わかったよ」

昼休みの購買は戦場。

女子にとってはとても困る男どもの戦いの場。

だから私はいつもジャッカルにお金を渡して私の分のパンも買いに行ってもらう。

待って間はデザートのプリンを買いにいったりする。

『今日はイチゴプリン、イチゴプリン〜ってなんじゃこりゃぁあ』

鼻歌を歌いながらデザートの方に行くと、今日はこっちも混んでいた。

『しかしながら、今日はイチゴプリンの日なのよ。私は行くわ、例えそこが戦場であろうと……!!』

気合いを入れて男どもが群がるデザートコーナーに向かっていった。

後ろの方の人はだいたいが私のことを知ってるのか、なんでか道をあけてくれる。

ここまではいい、問題は最前線だ。

「このプリンは譲らねぇぜぃ!!」

「ちょっ、丸井先輩ずるいっす!!」

その最前線には我が弟子ブン太と赤也くんがいるようです。


『(それにしても男居すぎだろ…うげぇ)』

目の前をゆらゆらと蠢く男の大群にちょっと嫌悪感を感じながらも私は隙間を見つけてそこをすり抜けて前に出た。

『おばさん、イチゴプリンとミックスゼリーありますか?』

「あ、なまえちゃん。取っといたよ、はい」

『ありがとう!』

何とかお金を払い、今度は男の大群を逆戻りする。

ドンっとぶつかるし、ぎゅうぎゅうと押されるし、やっぱり男の大群は嫌だ。

プリンとゼリーを落とさないように歩いてるとやっと混雑の出口を発見。

『ちょっと、すみませーん』

何とか出ようと男の隙間を通り抜ける。

混雑から脱出に成功!

『うわぁっ』

と思ったら足が絡まってバランスを崩して体が前に傾いた。

ぼすっ

「大丈夫か、みょうじ」

『!』

転ぶはずだった私は誰かによって受け止められた。

誰かだなんてその声を聞くだけでわかる。

『やや柳くん…』

「あまり女子がこの混雑の中入って行くのは進めないぞ。いろいろと危なすぎる」

『ごめんなさい、ありがとう』

「次からは気をつけるんだぞ」

起こしてもらってお礼を言うと頭をぽんぽんと撫でられた。

ぼふん

顔は噴火寸前。


「おい、気をつけろよなまえ。ほらプリンとゼリー」

『ありがとう、ジャッカル』

ジャッカルが落としたデザートを拾ってくれたのを受け取る。あとついでに頼んでいたピザパンをもらった。

『あ、そうだ。柳くん!』

去ろうとした柳くんをがんばって引き留める。

「どうした?」

『イチゴプリンとミックスゼリーならどっちが好き?』

「何故そのようなことを聞く…どちらでもいいが」

『じゃあこのイチゴプリン。どうぞ』

イチゴプリンを柳くんに渡すと不思議そうに眉が八の字になっていた。

「なんだこれは」

『この前と今日のお礼。良かったら食べてください』

そう言うとふふと笑われた。

「ではありがたくいただいておこう。ではな」

また頭をぽんぽんとされる。しかも笑顔で

は、は、は、鼻血が出そうだぜ。

「おーい、幸せ中悪いが飯食わねぇか?」

『ほんと幸せ中邪魔しないでよ』

「腹減った」

『ほんじゃあ行くか、あ これあんたのゼリー』

「おう、サンキュー」

それからジャッカルといつもの定位置で一緒にお昼ご飯を食べました。


(今日はちゃんと話せた!)
(よかったな…)




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bkm
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