作品集 | ナノ



作品展示
愛を吐き出してみる。


[2]京拓(バレンタインver.)
by 日和
2012/02/14 20:38


・正確には京→拓です



部室の前を通るとがやがやと騒がしい声が聞こえた。中にはキャプテンの声も聞こえてあの冷静ぶったキャプテンまでもが騒いでいるのかと興味が沸き部室の扉を開く。


「あっ、剣城だー」

松風が元気よく掛けよってきて皆が注目しているキャプテンのロッカーの所へ連れていかれる。
良く見るとキャプテンが小さな上品な包み紙に包装されたチョコレートを抱えている。


「先輩方もどうぞ、ほら天馬も」
「わあ、ありがとうございます!」

キャプテンが微笑みながら一つずつチョコレートを渡す。ああ、そういえば今日はバレンタインデーだかってやつだったかと今更気が付く。
松風が隣でわいわいと騒ぐとキャプテンが照れくさそうに髪に手を置く。

「…一応手作りなんだが、あの、初めてだから、味の保証はないぞ」
「!」


手作り、というのに引っ掛かる。あの金持ちの世間知らずなキャプテンがチョコレートを手作りなんて考えもしなかった。俺がチョコレートを懸命に手作りするキャプテンを想像しているとくるりとキャプテンが此方を向いた。


「剣城の分もあるぞ」

はい、と渡されて黙って受け取る。じい…とキャプテンを見つめるとキャプテンは瞳を丸くさせてどうしたんだと訊ねてきた。
何でもないです、と言いつつも実は内心穏やかではない。


「(俺、何喜んでんだよ)」

キャプテンは俺だけが特別という事じゃなく皆平等に仲間としてチョコレートを配っているだけなのだろう。それなのに慣れない手つきでチョコレートを作るキャプテンを想像して嬉しくなってしまう。

「(――これじゃあ俺がキャプテンの事を好きみたいじゃねえか…)」


あんな最悪な出会い方をして、暫くは険悪な仲だったキャプテンを。
真面目で涙脆くてこういうタイプが俺は嫌いだった。そして相手も俺のようなタイプが嫌いだったであろう。



今更気付いてしまった自分の心に蓋をする様にぎゅう、とチョコを握り締めた。


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[1]ドキドキ京拓
by じゅん太
2012/02/11 23:24
隣にはキャプテンが座っていて、俺は汗ばんだ手のひらをズボンで拭って何とかその場をやり過ごしていた。
今日、俺とキャプテンが呼ばれた理由は、俺らに関係する同盟が作られことに対して二人で挨拶をするために呼ばれたらしい。……なぜ“らしい”と曖昧な表現となるかは俺が直接聞いた内容ではなくて、姿勢を正して鎮静しているキャプテンが案内される前に俺に告げたのだ。足早に告げられた用件を整理して無言の時を過ごそうと考えた時、剣城と一言、キャプテンが俺の名を呼んだ。
「お前は……その、緊張しないのか?」
「……は?」
「あ、いやだって、お前いつも通りだし……俺、挨拶とかいきなり無理、」
部屋に着いてから無言であったのは二人の時間が気まずいとかではなく、後々始まる挨拶に緊張しているが故の無言であったらしい。いつもは堂々とどんな相手にも怖気ることなく発言するキャプテンの意外な一面。――いや、意外ではなく、実は緊張するタイプなのかもしれないと考えを改める。俺が知らないキャプテンのことをまた一つ、知ることが出来たのかもしれないと考えるだけで嬉しく感じられた。
「俺も緊張していますよ」
「っ、本当か!?」
目を見開いて良かったと今にも手を叩かんばかりのキャプテンは、俺が汗ばんだ手のひらをズボンで拭っている姿をきっと知らない。
これでもあんたの隣って、結構緊張するんですよ。もどかしい距離を縮めたいとも思うし、遠ざかって傷つけたくないと思ってしまうから。
二人の空間が良い意味での緊張があって幸せでもあることは、仲間だと言わんばかりの瞳を向けるキャプテンには秘密だ。


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