リアル
「ヒル魔ぁ…ヒル魔ぁ…」
「おいこの胸糞悪ぃもんはなんだよ」
「…酷ぇ…なんでそんなこと言うんだよ…"コッチ"じゃ俺の思い通りだろ…?なあヒル魔ぁ…」
「………………おい答えろ」
「…………葉柱様はたぶん、その…ヒル魔様を"夢の中のヒル魔様"と勘違いしておられるのではないかと…」
「あ゙?」
「…憶測ですが…夢と現実の境がわからなくなって今は夢の中で、ヒル魔様は夢の中の人物だと思っておられるのではないかと…」
「お前の夢ん中の俺は恋人か何かかよ」
「ヒル魔ぁ…ヒル魔…今日は何か冷たくねぇ?"アッチ"のヒル魔みてぇな…」
「……葉柱」
「…なんで『ルイ』って呼んでくんねぇの?なあ…って」
「………葉柱!」
「俺、ヒル魔のこと…好きだよ、だから抱いて?そしたら分かるだろ?」
「…………」
「なあ…いつもみてーに『ルイ』って呼んで…なあ…」
「………………『ルイ』」
「…ふふ」
笑う葉柱の顔は幸せに満ちていて胸が酷く痛んだ。
* * * * * *
「…なんで俺起きねぇの?いつもなら目覚ましで起きんのに…」
「……葉柱」
「『ルイ』って呼んでくんねぇヒル魔の夢ならもう覚めろよ!!」
「お前いい加減にしろよ!!コッチが現実だ!」
「……何言ってんだヒル魔?やっぱお前変だよ…」
「……………」
「覚めねぇなら起こすまでだ。流石に死んだら起きるだろ、夢なら死なねぇしな」
「葉柱!!」
「ヒル魔待ってて…起きてまた夢見るから…そしたら"元のヒル魔"になるよな…?」
「……糞!!」
「…………なんで止めんの…?」
「糞……もういい。抱いてやるよ…『ルイ』…来な」
どろどろになるまで抱いて、夢ん中に無理矢理落とす。
* * * * * *
どこで間違えた?
葉柱の夢に俺を登場させるのは上手くいったよな。夢ん中での俺は好意を持って葉柱の思い通りに動く。そのおかげで現実の葉柱も少しずつ俺に心を開いた。
夢を見なくなってから、か…?必要以上に眠ろうと睡眠薬を服用し始めた葉柱についうっかり『ルイ』と呼んだ俺が悪ぃのか?結果葉柱はどっちが現実か分からなくなって夢ん中にいると思い込んでしまった。
"俺のもの"にはなったが葉柱はずっと"これ"を夢だと思ってしまってる。もう一生覚めることなんかねぇのに。
現実に戻ろうとする葉柱は自分を殺し兼ねない。止めるのも一苦労で、いつも葉柱は俺の名前を甘く呼び、ねだる。そのときばかりは自殺衝動を抑えられているのか、優しく抱くと幸せそうに笑う。
セックス無しの生活から一歩も抜け出せねぇ。堕落した生活。狂ってるとは分かっている。それでも、終わらせたくねぇんだ。
「お前何言ってんの?」
Fin.