リアル
夢のヒル魔はすごく優しい。
普段見せない顔で優しく笑って俺のことを『ルイ』と呼ぶ。
どっぷりと甘やかされて俺はもう何も考えられなくなる。
二人で暮らす部屋は殺風景でそれだけがすごく違和感だけど俺はあの部屋が大好きだ。
セックスして丸一日過ごすこともあればデートしてホテルに泊まって帰らない日もある。
「ルイ」
ヒル魔の声がする。甘くて甘いその声に俺の全部が蕩ける。
ピピピピピピ──────
「……ん」
電子音と共に夢から覚め、無理矢理現実世界に引き戻される。
時刻は5時を少し回ったところでもう少し眠りてぇなあ、と思ったところで今度は携帯のアラームが鳴り始めて渋々体を起こして顔を洗う。
まだなんか夢見心地な感じがしてすっきりしねぇからシャワーを浴びて5時30分。
タオルを洗濯機に入れてスイッチを押すと中で回転し出した。
ワックスを手にとって髪をセットして着替える。
* * * * * *
「遅ぇ」
柳眉が不機嫌そうに歪んでる。
「……悪ぃ」
「……………」
5時50分を数秒過ぎてヒル魔のマンションに到着すれば開口一番上記の台詞。
ほんの一時間前の夢の中のヒル魔はこれでもかってぐらい優しいのになあ。
「さっさと出せ糞奴隷!」
「カッ、振り落とされても知らねーぞ!」
横乗りをやめないヒル魔にいつも通りの台詞を吐いてアクセルを回す。
* * * * * *
「ルイ」
これは夢?意外にもふわふわしてる髪の感触。
ヒル魔はクスクス笑って俺の唇にキスをした。
「…ヒル魔…、」
「これは夢だ。そうだろ?」
「ん……」
"夢だから"。だから羞恥は感じない。俺の思ったようにヒル魔は動くし与えてくれる。
「………ヒル魔ぁ」
ヒル魔に乗り上げてキスを深く求める。ヒル魔の手が背中に回ってギュッと抱き締められる。