メリクリ
「なー…クリスマスどうすんの?」
12月も半ば、何も言って来ないヒル魔に業を煮やした俺は自らお伺いを立てることにしたわけだ。
「…あ?クリスマスぅ?何お前もしかしてパーティーとかディナーとかしたい派?」
パソコンから目を離してこっちを向くヒル魔。その口からは恋人とは思えない台詞が…。
「ゔ……、」
別にしたくねぇわけじゃねー。けど…やっぱ一緒に過ごしてぇじゃん。
「どーせあれだろ、賊学でパーッとすんじゃねぇの?」
「……まあ…そうだけど……」
「俺今年は顔出さねーとうるせぇとこあるしなあ、部活終わってたぶんそっち行くな。まあ時間あったら賊学に顔出してやる」
「うん…」
「25日は一緒にいれんだろ。賊学の奴らと朝まで騒ぐんじゃねぇぞ?」
早めに帰っとけって言われたら頷くしかねぇけど。
「………ホテル取るか?」
夜景の綺麗な部屋と最高級ディナー。それもいいけどやっぱ。
「お前パーティー行くんだろ、なら帰ってゆっくりする方がよくね?チキンだけ買ってくればいーよ」
「了解。じゃあなんか適当に飯作るかデリバリーしとけ」
「酒どうする?たぶん実家からシャンパン届くけど他にも買っとく?」
「任せる。俺も適当に買ってくればいいだろ」
「ん」
「夜お前の体力残ってたら夜景とかイルミネーション見に行くか?」
「…体力残ってたらってなんだよ…」
「決まってんだろ」
ケケケとヒル魔は笑って。
「よ」
あ、きた。
正装のヒル魔。
「何、もう終わった?」
今日はパーティー会場を梯子って言ってたから…来るとしてももうちょい後だと思った。
「次までちょい時間あるしな。1日中お前の顔見ねぇのもどうかと思って」
「……うるせぇよ」
朝会ったじゃん。
「はいヒル魔引いて」
イチャつくなーって周りから野次なのか冷やかしなのかが飛び交う中、銀が王様ゲームの続きを促す。
「羨ましいだろ?」
棒を引きながら引き寄せられてキスされた。
「ちょっ…」
「あ、俺王様だ?」
今引いたばっかの棒を見ながら隣でヒル魔が呟く。
お前何番?って覗いて来ようとするから必死に隠す。
「チッ、じゃあ軽くジャブいっとくか。2番と6番がキスで」
「くくく…。」
「いやぁあああ!!!」
「はいヒヨコちゃん大人しくしててねー」
「銀…」
熱烈なキスをロニにした後、王様ゲーム再開。
「…………キター!!!!!俺王様ー!!」
うわあ。銀が王様のときって大概えげつねぇんだよな…
俺に来ませんように………
「ん〜〜じゃあねー」
銀が見渡せば一斉に目を逸らす。ヒル魔以外。
「………4番と〜」
「ヒッ」
「…1番、が、キス。濃いやつね〜」
「…ほら来いよ4番。キスしてやる」
てめ、このやろ、俺が何番か知ってた上に“俺が1番ですアピール”してやがっただろっ!銀も当てるなよ!
「ほら早くしねーと終わんねぇだろ、口開けろよ」
ヒル魔の舌がやらしく誘う。
「〜〜〜〜カッ」
もー!
「…………〜〜〜〜ッ、もういいだろっ!」
「ゴチソウサマ〜」
事の元凶にそう言われてロックグラスを煽る。ハイハイ次ね。
でもこーゆーのってホントにいやだ。なんで王様になる奴がほとんど銀とヒル魔で、罰ゲームを食らうことになるのが俺かロニなんだよ。
おかしいだろ。なんか仕掛けあんじゃねぇのかって疑えばないって言うしー
「はい俺〜」
またかよ、今度は何言うんだよ。
「王様に8と9がキス〜♪」
「…お前、酔ってる?」
俺8だけど………
「ルイ右ね」
は い ?
「俺9番なのっ」
あぁ、なるほど…って、何してんだよ?
「どーせならキスマーク付けてやろーじゃん」
銀が取り出したのは真っ赤な口紅。さっと塗り終えた銀はヒル魔に絡み出した…かと思えばヒル魔の左頬に口付けを施した。
「お前…ひでぇことすんなァ、彼女に怒られたらどーしてくれんだよ…」
ヒル魔はそう言いながらニヤリと笑い、銀を引き寄せてこっちに見せ付けるようにキスをし始めた。
二人はお互いにやめない。
激しい水音までしだしたし…
「……………」
なんかもう… イ タ イ 。
ようやく離れたかと思えばヒル魔に抱き寄せられて。
「消毒」
口直しとばかりに口内を蹂躙された。
「ひっでぇの〜」
銀はケタケタ笑ってた。
「…さて、」
次のゲームをしようかと言うところでヒル魔の携帯が鳴る。
携帯を一瞥した後高そうな腕時計を見やって。
「…わりぃな」
そう言ってヒル魔は電話に出ながら出て行った。
「あーーヒル魔まだ帰んないでよーー」
銀がグラスを煽りながら言い始めた。うるせぇからなあ…
わりとすぐに戻って来たヒル魔はじゃあそろそろ出るなって言って。朝までには帰る、と耳打ちされた。
「……ん、」
「あーあ」
銀は一瞬つまんなさそうに言って、ぱたぱたと手を振った。それにひらひらと手を振り返すヒル魔の頬には銀が付けたキスマーク。
取るんだよ…なあ…?
ピンポーンと珍しくインターホンが鳴るから眠い眼を擦って出てみればヒル魔がいた。
「Merry X'mas!」
「え?」
流暢な英語の後、バサッと深紅の薔薇の花束を渡された。
「よし、起きてたな」
寝ようとしてたけどな。あと5分遅かったら寝てたと思う。
時刻は2時50分を過ぎたとこ。もう眠い。
「思ったより早く帰れたと思わねぇ?」
ヒル魔が着ているのはものすごく高そうな黒いスーツ。また着替えたんだな、通り過ぎ様にコロンの香り。
ネクタイを緩めながらリビングに移動してテーブルの上に真っ赤なポインセチアと一緒に紙袋を置く。
「なに?」
「プレゼント。こっちは貰った」
こっち、と指したポインセチア。どうしろって?
「お前んとこに置いとけよ」
観葉植物の隣か窓際に置いて水やりゃーいいんだろ……それより気になる“プレゼント”。
開けようとしたら後でなって耳打ちされて、速攻で寝室に連れ込まれた。