ksxx5

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「―!」
びっくりして立ち止まったらなぁに、と隣で女が囁いた。
ヒル魔と、女。パタン…と二人が部屋に入るとドアが閉まり、カチャッと鍵が閉まる音が響いた気がした。
「……なに、やる気ないの?」
ここまで来といてそれはないんじゃない?と口を尖らせる女。それを貪るようにして口付け。
かなり乱暴に激しく、抱いた。
――こんなのは、ちがう。





























「…んだよ、今日はまだ呼んでねーぞ」
「っ…、さっきの…」
「あ゙?」
「……」
「………。お前が浮気したなんて知らねーから帰れよ」
「てめ、」
知ってて…?
「優しーだろ?」
「……俺、」
「…妖?どしたの、」
「っ…」
奥からバスローブ姿の美人。
「こいつが俺とお前のカンケーを聞きてーんだと」
「…そうなの?」
その美人は前髪を掻き上げてこちらを向く。
「っ」
「肉体関係あるとこまでバラしていい?」
「やだー」
くすくすと笑いながら俺を見る眼は嫌悪感を露にして。
「かーわい」
「だろ?」
「〜〜〜〜〜っ」
「てわけで帰れ」
「カッ!!…そうかよ、分かった。ならもう迎えに呼ぶなよっ!!」
潤んできた眼を見られたくなくて、口早に言って踵を返そうとしたら、ヒル魔に腕を掴まれた。
「…?」
「お前じゃねーよ、糞女。てめェ帰れ」
「…は?」
「…えっ?」
「聞こえねぇ?帰れっつったんだよ」
「は!?なに言って、」
「俺がてめえを本気で相手すると思ったのか?」
「…ッ、サイテー!」
巻き髪を靡かせてその美人は通り過ぎ様に睨み付けて行った。
「………『最低』ねぇ…。汚ぇユルマンの方が最低じゃねぇ?」
「……」
「な?」
「………」
「……で。じゃあ言い訳を聞いてやろーじゃねぇか」
「お前だって、っ」
「あ?」
「…っ、お前だって浮気してんじゃねぇカッ!」
部屋の奥に進むと、乱れたシーツの上に散乱したティッシュと………。
「…それが?」
「お前だってしてんだから…、俺のこと責める権利はねぇはずだっ」
ベッドをなるべく見ないようにして続ける。
「もう…別れる」
「は?」
ヒル魔が、昔っから女の方がいいって言ってんのは知ってっし…、でも俺もう我慢できそうにねぇ‥し。
「別れて」
「………潮時か。いーぜ、最後にヤらせろよ」
ぐいっと引っ張られてまだ情事の痕が色濃く残るベッドに沈められた。
「やッ、…!」
「うるせぇ、」
「ャ、め・っ」
抵抗してんのにヒル魔は止めようとしない。どころか。
「…っ」
キスをしてきた。首に、そして額に。
「暴れんな」
言ってヒル魔は優しく口を塞いだ。
女だったら。女にだったらこんな風にすんのか。
思ったら涙が出てきて。さっきから堪えてたのが溢れた。
ヒル魔は一瞬びっくりしたみてーな顔をしてから微笑んだ。
「っ」
あまりにも、いつもと違うから。それがまた涙を溢れさせて。
それさえもヒル魔は拭ってくれる。
いつもはぜってぇそんなことはしねぇ。
「…っ、」
涙が溢れて滲んで、今ヒル魔がどんな顔をしてるか分かんねぇ。ただ、ルイ…って呼ぶ声がいつもより優しくて。
もうお別れなんだと思うとまた涙が溢れる。最期だからしっかり覚えときてぇのに全然分からなくて。
まだヒル魔が死ぬ程好きだと再確認させられたよう。
「―――――ヒル魔っ…」
自分の声に目を開ければヒル魔はいなくて。今までのことが全部夢みたいに感じる。
夢だったらいいのに、ヒル魔の俺専用携帯と指輪と俺のマンションの合鍵がテーブルの上にあって夢じゃねぇんだと実感させられた。
「…………………、」
ヒル魔。
どれくらいそのままでいたんだろ。
フロントからのコール音が鳴って、我に返った。
身体は綺麗になってて、僅かに腰が鈍いくらい。
「………あーあ…、」
誰に言うわけでもなく一人呟く。
………やっちまったなあ。
酷く目が痒くて擦ったら、濡れていて、涙が出ているんだと気付いた。



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