sweet morning day
AM 4:57
「……………………ん…」
ふと左側に違和感を感じて目を開ければ、隣に葉柱が潜ったところで。
もぞもぞと擦り寄ってきて、俺を見上げて一言。
「…ただいまぁ」
てめェ帰ってこねぇって言ったじゃねぇか。
しかも酒臭ぇ。
「……………」
「ただいま?」
愛くるしい表情でしつこく食い下がってくる。
「…………………………………おー…」
仕方無く適当に相槌を打ってやった。
それで終わると思った。
が。
「おかえりのきす、して」
終わらずに更に要求をしてきた。
それには応えず、右側に体を向けて目を閉じる。
「ひるまぁ〜」
「……………」
「ちゅうー」
「……………」
「ちゅーうー」
「……………」
「…してよぉ」
あーうるせぇ。
ガキみてぇに体を揺らして、起こそうとする。
ズガンッ
「ねみーんだよ。寝かせろ」
枕元ので軽く一発撃ってやれば葉柱は大人しくなった。
AM 10:01
「―――――…ま、ヒル魔。ヒル魔っ!!」
……………………うぜぇ。
「………起きた?」
てめーのせいでな。
「ひるまぁーおきよーぜー」
俺が目を開けたことが分かると糞デケぇ目でこっちを覗き込んでくる。
「…………」
「ヒル魔ぁ。起きろよー」
ちゅ、と頬の辺りに唇の感触。
………なんだっつーんだ。
「…………」
むくりと起き上がる。
「おはよーひるまぁー」
「おー…」
「おはよのきす」
「…ほらよ、これで満足か?」
軽く唇にそれを重ねてやった。
「…ン、もっと。いっぱい」
「…後でな」
「ちぇー」
昨日、葉柱は賊学の連中と流しに行って。
久しぶりだからちょっと遠くまで行って、飲んでくるって。
俺はいつも通り資料整理をした後、遅くまでビデオを見ていた。
葉柱が帰ってくんのは明日近くだと予測して、明け方近くにベッドに入った。
まだ10時じゃねーか。
正直寝足りねぇ。
昼過ぎまで寝て過ごす予定が崩れちまった。
「…で、なんでてめーんな早ぇんだよ」
「…えっ、…と…………………………怒らねぇ?」
「さあな」
「じゃぁ言わねぇ」
「……………寝る」
今てめーの駆け引きのお遊びに付き合うぐれーなら仮眠を取るぜ。
起き上がっていた体を再びベッドへ倒せば、慌てたように葉柱が話し出した。
「…最初は普通に走ってたんだけどよ、途中でロニのバイクが壊れちまって。そこら辺何もねーし、朝まで待つしかねぇから、ロニはバイク置いて近藤と2ケツで走ってたんだけどよ。まじで何もねぇから酒とか買うとこも無くて、一回戻ろうか迷ってたら、すげーヤバめの感じの車が来てよ。通り過ぎたときに、さっき置いてきたロニのバイクがその車に乗っててよ。とりあえず追いかけて。少ししてその車が止まってよ。男が出てきて、ロニのバイクだっつったら、下まで持ってってくれるらしくて。で、なんか意気投合しちまってよ。そしたら、そいつらの集まりに俺らも来ないかって誘われて。タダ酒って言われたら行かねーわけにいかねぇだろ?で、飲んでたら小便したくなってよ。すげー酔っちまってトイレ分かんなくてよ。近くの奴に聞いたら、そいつも小便らしくてよ。結局連れションになっちまって…そこからはあいまい、なんだけどよ………って聞いてる?」
「きーてるきーてる」
「………で、小便し終わって、戻ろーとしたら、そいつが何か言ってんだけど、わかんなくて、適当に相槌打ってたら、なんか………されて…気が付いたら、ヤバくって…逃げてきた」
「あ゙あ?」
こいつ、何つった?
「……だ…から、怒んねーでほし、かったん…だ、けど…」
「小便し終わって、何だって?」
「……す、され…て」
「あ゙?」
「……き…す…」
「で」
「え、と…ごめん…?」
「糞!それからどーしたって聞いてんだよ」
取り敢えずマシンガン装備。
「な…んか、気付いたら…」
「やられたのかよ」
「…………たぶ…ん、」
―――処刑決定。
ダダダダダダダダダダダダダタ……………………
「糞!!!!!!!なにてめー簡単に足広げてんだよ!あ゙あ゙?」
「や、ちがっ…」
葉柱は慌てて逃げ惑う。
「何がちげぇんだよ!この糞淫売爬虫類っ!何人咥え込んだんだあ?俺だけじゃ飽き足らねぇってか。よくのこのこと帰って来れたなあ?そんなにハメて欲しけりゃそいつらにしてもらえよ。俺はもう知らねぇ!!!」
一気に言って弾がなくなるまで撃ってやった。
「………あ・のー…ヒル魔さん?」
弾がなくなった頃を見計らって、葉柱が動く。
「来んな」
ガチャリ…と別の銃の照準を葉柱に合わせる。
てめェ結構ヨカったんだけどよ。
惜しいが残念だったな。
「言いてぇことあんなら言っといてもいいぜ」
「…ヒル魔。聞いて」
なんだよ。
てめーなんか知らねぇんだよ。
「俺…、やられてない」
………………は…?
「俺、やられてない。ヒル魔だけ。ヒル魔だけにしかやられてない」
「………俺が『やられたのかよ』って言ったら『たぶん』って言ったじゃねーか」
「『たぶん、やられてない』って言おうとしたんだけど」
「じゃぁ尚更やられてっかもしんねーじゃねぇか」
「うん、でも…たぶん大丈夫。疑うなら、ヒル魔が調べて?俺のカラダ」
…やらしいな、てめェ。
それでまじでやられてったらブッ殺す。
「…ファック………来いよ」
銃を置いて呼んでやる。
葉柱はほっと息を吐いてから近付いてきた。