欠乏
カッ…女と間違えてやがる…
ゼファーの点検してもらう為に隣町へ行った帰り。
電車は混んでいた。
ただ隣町へ行くだけだったから、刺繍入りの白ランを着ることもなく。
髪をオールバックに撫で付けることもなく。
ざっくりと編み込んであるニットとジーンズにダウンという出立ち。
銀縁フレーム眼鏡は伊達。
そんな格好で混雑している電車にいる。
《葉柱ルイ》の格好にするにはあまりにも面倒で。
この押し潰されそうな空間もあと数分の我慢だ。
そう思い、人の波に体を任せた。
だが。
それがまずかったのかどうか分からないが、初めはドア付近にいたのにいつの間にか端っこに追いやられてしまった。
しかも周りは自分よりタッパがある奴等ばかり。
そろそろ降りる駅に着くはずなのに身動きが取れない。
そんなときだった。
後ろに違和感を感じたのは。
気のせいだと思っていたのは人の手で、それは厭らしくも尻を撫で回していた。
ソイツは気をよくしたのか知らないが、身動きが取れないのをいいことに、行為はエスカレートしていく。
ッ、そこは………
ファスナーを降ろす音が大きく聞こえた。
「………ッ…!」
飛び出したソレに手が触れ、思わず声を噛み殺す。
「…あれ。気持ちいいの?厭らしいんだね」
耳の後ろで熱い吐息と一緒に聞こえた声。
ソイツの手は留まることを知らずに下着の上から勃ち上がった自身を撫でる。
「…っゃ…め……」
ソイツの手を掴んでも、意外にも力は強く、引き剥がすことはできなかった。
そうなれば、あとはされるがままになって。
「君、中性的でどっちかなあって思ってたんだけど男の子なんだ。可愛いね」
言いながら下着の中に指が進んだ。
やめろっ…
思ってもソイツの手は自身に到達した。
「…なにこれ?」
弄り倒すようにしてソレを集中的に触られる。
ソレ―ボディーピアス―は、ヒル魔につけられたもの。
ヒル魔のモノ、って証。
「…彼氏につけられたの?」
別に関係ないじゃん。
思って身を捩れば。
「…見られたいの?」
イヤダ。
ビクンと反応したのが自分でも分かった。
「大人しくしてなよ…?」
抵抗することができずに難なく下着を下げられた。
ジーンズは膝の辺りに引っかかっている。
「!」
「吸い付いてくるよ?」
指がソコに触れた。
器用に前と後ろを刺激してくる。
声が出そうで必死に両手で塞いだ。
もう、抵抗することは考えられなかった。
ヒル魔がアメリカに行ってからは自慰で紛らわせていたけど、人にやられると余計に感じちまう。
ぐちゅぐちゅ、と音が聞こえる気がする。
「…………っ…、………ふ……、……」
「…次、降りよっか」
つい頷いてしまった。