「う゛ぅう…どうしよう…」

魔物に犯されてから一週間。次の目的地である市街地へ向かう旅路の途中、休息のために立ち寄った宿場で俺は頭を抱えていた。
狭く質素な部屋にはベッドが三つ、敷き詰められるように置いてある。すぐ隣からは賢者の寝息と武闘家の鼾が聞こえてくるというのに、おれは身体に起こった異変のせいで寝付けずにいた。

おかしい。身体が熱い。そんな気はさらさらないというのに、ペニスが勃起し収まらない。それどころか尻の奥が疼いてむずむずする。
俺は徒労に終わるとわかっていても、寝返りをうったり全身を抓ってみたりと布団の中でごそごそ動き回ることで気を紛らわそうとしていた。
この場で自慰をするわけにはいかないし、トイレに行こうにも俺がいるのは扉から一番遠いベッドだ。狭い部屋に無理矢理3つのベッドを置いているせいで、人一人まともに通れないほど余白のない室内から外に出るには、賢者と武闘家を跨いでいかなければならない。つまり確実に起こしてしまう。

「う゛ああ…何でこんなことに。こんなの変態じゃないか…」

魔物に犯されたせいで体質が変わってしまったのだろうか?だとすると一生このわけのわからない症状を抱えて生きなければならないのか?
魔物に犯されたせいで勝手に勃起し、尻を弄られたくなった勇者なんて聞いたことがない。きっと皆に馬鹿にされていやらしいと蔑まれるに違いない。
布団の中、膝を抱えていると様々な憶測が頭を巡り、鼻の奥がツンと痛んだ。

やっぱり勇者になんてならなければ良かった…。

泣いている事を隠すために布団に顔を押しつけてぐすぐす鼻を鳴らしているとすぐ隣、三つ並んだうち真ん中のベッドから優しい声が聞こえてくる。

「勇者…?どうしました?どこか具合でも?」

どうしよう。何もしていないのに起きてきてしまった。
いつもなら嬉しいはずの賢者の慈愛に満ちた声音も、この時ばかりは喜べなかった。心臓がバクバクと破裂しそうな程大きく脈打っている。
知られたらどうしよう。このはしたない身体を見られたら。それだけは絶対に阻止しなければ。男三人の狭苦しい部屋で勃起してるなんて知られたくない。

「な、何でもない…。ちょっと寝付けないだけ、気にしないで」

俺は賢者と顔を合わせたくなくて、壁を見つめながらぼそぼそと早口で言った。

「ああ、勇者。それはいけません。明日からも旅は続くのですから、睡眠はしっかりとらなくては。やはりどこか具合が悪いのでしょう?」

「あ、ええと、大丈夫!平気だから!」

平然を装ったつもりが逆効果だったのだろうか。隣から聞こえてくる衣擦れの音に、賢者が完全に覚醒し起き上がった事を悟る。
俺の気持ちなんて知る由もない賢者は自分のベッドから俺のベッドへと移動すると、優しさに溢れた手つきでそっと俺の背中に触れた。過敏になった身体に急に触れられ俺の身体が跳ね上がる。

「ひっ…!」

「勇者、あなた熱が?こんなに汗をかいて…どうして私に言わないのです?」

「お、起こしたら悪いかなって…だ、だ、大丈夫だから!こんなの熱のうちに入らないって!ほっといたら治るから賢者は寝てていいよ!」

「しかし勇者…」

「いいって!大丈夫だから!大丈夫だからほっといて!」

不自然に壁を見つめたまま、そうまくし立てる俺の背後から小さな溜息が聞こえたかと思うと、後ろにいるはずの賢者の気配が消えた。
賢者は俺に呆れて自分のベッドに戻ったのだろうか。溜息を吐かれたのは少しショックだったけれど、この身体を見られるよりはずっとマシだ。
賢者に勃起がバレるという危機が去ったのだと安堵しかけた瞬間、俺の耳にとんでもない言葉が飛び込んできた。

「ほら武闘家、起きてください。勇者、熱があるみたいで。なのにほっといてなんて言うんです。困った子でしょう?あなたからも何か言ってやってください」

思わず後ろを振り向くと、鼾をかいて熟睡していたはずの武闘家を賢者がゆさゆさと揺り起こそうとしている。

「いいいい、いいから!せっかく寝てるんだから起こしたら悪いよ!」

ああああああやめてくれ!武闘家まで起きてきたら俺はどうしたらいいんだ!
武闘家を起こしてはなるまいと必死に喚く俺に、賢者は訝しげな表情で言う。

「何を言っているんです勇者。あなたは勇者なのですよ?熱があるなんて一大事です。ほら、起きなさい筋肉馬鹿」

「ん゛、んん、……あ?もう朝か?」

ああ、起きてしまった。もう俺は終わりだ。二人に笑われてしまう。それだけじゃなくて勇者失格だと失望されてしまうのかも。
”勇者…あなたがこんなにはしたない人間だとは知りませんでした。あなたを信じて仲間になったというのに…あなたにはがっかりです。”
悲しげな表情の賢者と武闘家が頭に浮かぶ。勇者なんてやめてしまいたい、そう思いながらも何の取り柄もない俺を慕ってくれる仲間を失いたくはなかった。

「違いますよ。勇者に熱があるんです。私達の勇者が苦しんでいる時に呑気に寝ている場合ですか」

「…何だって?おい、大丈夫か勇者」

二回目の衣擦れの音。とうとう武闘家まで布団から出てきてしまった。
もうやだ。もうやだ。どうしよう。このままじゃまずい。

「うううう大丈夫だからこっち来ないでぇ…!」

「勇者、あなた泣いているのですか?そんなに辛いならどうして私達に助けを求めてくれないのです」

「おいおい大丈夫じゃねぇだろ。ちょっと見せてみ?」

辛いのは勃起が収まらないのとお前らが起きた事だ…!
壁を見つめ布団を身体に巻き付けたまま動かない俺を不審がった武闘家が、俺の布団をはぎ取ろうとする。

「何で布団離さねーんだよお前は…!ほら見せてみろって!」

「ぎゃああああやめてえええええ!大丈夫だからほっといて布団とらないでええええええ!」

体格も筋力も俺とは比べものにならない武闘家に力で抵抗できるはずもなく、あっさりと布団をはぎ取られた俺はせめてもの抵抗にと手で股間を押さえつけ身体を丸めた。もう男として矜持なんてかなぐり捨ててひぐひぐ泣きながら股間を押さえている俺を、二人は不思議そうな顔で見つめている。
とうとうバレてしまった。ぎゃーぎゃー喚きながらもしっかり勃起したままなんて変態じゃないか。恥ずかしい。穴があったら入りたい。いや、埋まりたい。

「ぐす、う゛ぅ、だからやめでって言ったの゛にぃ…」

「勇者…。これはいつから?」

絶対に軽蔑されたと震える俺の耳に届いたのは、意外にも穏やかな賢者の声だった。

「寝ようとしたら急にこうなって、ひっ、どうしようぅう魔物に変なことされたせいだ、ふぐっ、賢者が俺にあんなことさせるから…!えぐ、薬なんて飲まなきゃ良かった…!」

子供のように泣く俺の訴えに賢者はぴたりと動きを止め、考え込むような表情でしばし沈黙すると、異様なくらいにこやかな表情で俺の頭を優しく撫でる。

「え、ええ!きっとそうでしょう。あの魔物には何か特別な力があったのでしょう。別にあの薬のせいじゃないのですよ。ああ可哀相な勇者、倒した後も苦しめられるなんて…!」

賢者の隣にいる武闘家もその言葉にわざとらしいくらいぶんぶん首を縦に振っている。なんだかおかしい気もしたけれど、身体の疼きがますます酷くなりそれどころではない。
股間を押さえていた俺の手にそっと自分の手を重ねた賢者は、悲痛な面持ちで俺を見つめる。

「勇者、恥ずかしいかもしれませんがこれはあなたのせいではありません。大丈夫です。私達に任せてください。ああ勇者、私達のためにこんな身体になってしまうなんて」

「ま、任せるって…ひっあ゛、ダメ、やめて、」

賢者の手がごそごそと寝間着をまさぐり、俺のペニスにそっと触れる。

「勇者、あなたの苦しみを取り払ってあげたいのです。私達のために苦しんだあなたを放っておくなんてできません」

「勇者、お前が俺達の勇者で嬉しいよ。大丈夫、俺達に身を任せればいい」

うるうると涙の浮かぶ賢者の綺麗な顔に見つめられ、武闘家の逞しくも暖かい身体に抱きすくめられた俺はもう何も言えなかった。



「は、ぁあ゛っ、待、やっぱ、ぅあ゛、やっだ、ぁ…!」

服をすべて脱がされ、ベッドに仰向けに寝かせられる。
「暴れて怪我をすると危ないですからね、呪文をかけておきましょう」とわけのわからない事を言い出した賢者に拘束の呪文をかけられ、自分の意思では動けない。
自由を奪われ、これから何をされるのかわからない恐怖に怯えていると、武闘家は俺の片方の乳首をぢゅううう、と音がするほど吸い、もう片方の乳首を指で摘んでぐいぐい引っ張った。乳首なんて何故か男の胸にもついているもの程度の認識しかなかったはずなのに、その乳首から身体の奥がじんじん痺れるような、痛痒いような奇妙な感覚が生まれている。

「嫌?あなたのここはべとべとに濡れていますよ、勇者」

そう言ってクス、と笑った賢者は俺の先走りをだらだら垂らしながらぷるぷる震えるペニスを握りしめ、ごしゅごしゅとまるで牛の乳を搾るかのように扱き始める。

「あ゛っ!あ゛っ!それっだっぁ゛!や゛めっっ!」

「可愛いですよ勇者。先っぽも弄ってあげましょうね」

欠片も性を感じさせない清らかな優しさに満ちた笑顔の賢者は、俺のペニスを握る手はそのままに空いた片方の掌を亀頭にあてがうと、手を振るように擦る。過ぎる刺激に思わず俺が仰け反ると、武闘家がそれを咎めるように乳首に歯を立てた。

「あ゛ー!あ゛ーっ!そな、ごしごししたらっあああ゛、も゛、あ゛っでう、出ちゃ…っ!」

「勇者ぁ、乳首もいいだろ?」

「やっ、痛い、いだいっ噛んじゃっひぎ、あ゛っイ、ーーッッ!!」

仰け反り脚をピンと突っ張らせ俺はあっさりと、しかし盛大にイった。脳に電流でも流れているかのような快感に一瞬呼吸が止まる。鈴口からどぷどぷ溢れる俺の精液を賢者が愛おしそうに掌で受け止めたかと思うと、武闘家がその掌を瞬時に自分の元に引き寄せ、俺の出した精液をべろりと舐めた。息も整わぬままその光景を黙って見ているしかなかった俺に、武闘家はニヤリと笑顔を作る。

「ハァ、ハッ、…え゛、ちょ、何して…!」

「うん、うまい」

「うまいじゃねーよ!おま、俺の、ふぐ、ぅ゛う、ひど、もぉやだ…!!」

仲間に自分の精液を舐められ、恥ずかしいやらショックやら自尊心が傷ついたやらで俺は思わず涙を零す。仲間に自分のザーメンを飲ませる勇者がどこにいるというのだろう。きっと俺が世界初だ。

「ああ、泣かないで勇者。武闘家には後で私がきつく言っておきますから。まったく、この男には私も呆れるばかりです」

「自分だけ良い顔してんじゃねーよ羨ましいくせに」

賢者は武闘家を無視して俺の顔にキスの雨を降らせる。ちゅ、ちゅ、と柔らかい唇が涙を拭い、俺は賢者の優しさに幾分落ち着きを取り戻した。感じすぎて自分の身体が自分のものではないような感覚が怖くなり、子供のようだと思いつつ賢者にぎゅっとしがみつくと、賢者も俺を抱き締め返してくれる。

「ねえ勇者、まだ足りないでしょう?これは生理現象に過ぎないのですから、恥ずかしがらなくていいんですよ。素直におねだりしてください。次はどこに触れてほしいですか?」

一回イって収まるどころか、触れられもしていない身体の奥がますます疼き出したのを見透かしているかのような口調で賢者は言う。
魔物に犯され、もうこれ以上捨てるものはない、越えてはいけない一線はないと思っていたのは俺の勘違いだったようだ。仲間に尻の穴を弄ってくれなどと言えようか。それも無理矢理ではなく自分からだ。
しかし、俺の腸内は熱を持ち、少しでもアナルを意識して収縮させてしまうと、じんわりとした弱々しい快感が下半身に広がるような有様だ。意識してはいけないと思えば思う程、アナルがひくついてしまう。
もっと強い快感がほしい、奥を思いっきり擦られたい。そう訴える身体を俺は理性でぐっと押さえつけた。


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