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鳶色/裾/見せたくない

「こかげくんの目は、鳶色って言うんですねえ」

 包帯をつけたままの双眸が、その先を見透かすように。上目気味に青年を見上げる。鳶色、とどこか不思議そうな声に、霞花は首を傾げて、少し悩みながら口を開く。

「なんて、言えばいいんでしょう……えっと、」

 ううん、と首を傾げながら、何か思い当たったのか楽しげに顔を輝かして。

「あたたかい色です。すごく、こかげくんらしいっていうか……。ああ、こかげくんだな、って思う色です」

 にへ、と口元の笑みを見れば、木影も思わず唇を綻ばす。
 ──ふと、思い立って。少女の双眸を覆い隠す包帯に手を伸ばす。

「霞花ちゃんの目も、見たいな」

 ほろ、と唇から零れた言葉は、傍から聞けば中々に恥ずかしいものではあったかもしれない。霞花は頬を真っ赤にして、両の手でそれを隠すように覆って。

「うれしい、です。けど……わたしの目は、……あんまり、よくないです」
「どうして?」
「……きもちわるい、から……」

 ぐ、と涙を堪えるような声だった。包帯に少し滲んだように見えるのは、零れたものの後だろうか。思わず頬を押さえるその手の上から、己の手を重ねて。

「見せたくないなら、」

 無理にとは、と続けようとして。──少女はそれを遮るように、唇を開いた。

「こかげくんに、なら。……こかげくんになら、みせても、いいです」
「霞花ちゃん、」

 隠された双眸が、青年の双眸を見詰める。彼女の目が直接見えている訳ではないのに、視線が合っていると感じる。──ああ、彼女は確かに、俺を真っ直ぐに、見詰めている。

「あの、だから、」

 ──こかげくんが、めかくし、ほどいてくれますか。



140807 木霞

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