きみが見つけてくれるよね?
「ねえエリス」
いつもにもまして、唐突な呼びかけだった。
エリスは変な声で返事をして、椿に視線をやった。
「猫ってね、死期を悟ると誰にも見られないところに逃げるの」
だって、弱ったところは、見られたくないでしょ?
果敢なげな笑顔に、エリスは椿が消え逝くような錯覚を覚えた。
思わずその手を握るも、何を言ったらいいかもわからずに言葉を飲み込んでしまった。
「ねえ、エリス」
もしぼくが弱ったところを見せるのに耐えられなくて、きみの前から姿を消してしまっても、きみなら見つけてくれるかな?
「あっ、当たり前だろう! 傍にいてやる!!」
強く握りすぎた手は僅かに紅みを帯びていたが、椿はいつもの悪戯っぽい笑みではない、柔らかい笑みをこぼした。
by 確かに恋だった
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