03

「…ふぁ、眠………」

朝の起床時間は重要や、それによっては俺の機嫌が変わる。
最近は朝練も少なくなって、やや遅めに家を出られるようになった。
せやけど、朝っぱらから学校通って、睡眠時間を削る必要はあるんかと、毎度考える。
もしも学校っちゅーもんがなくて一日中寝てられたら、俺はどれだけ幸せを感じられるんやろう。
まあ、3次元に生まれてきた時点で、俺には“学校に通う”っちゅー義務が課せられたも同然やけどな。
行かなあかんもんは、行かなアカンくて、どうあがいしても未来への道には逆らえへんのや。
毎度毎度、そんなくだらんことぎょうさん考えて登校してるんや。
今日も今日とてそれは変わらんくて、せやけど何か起こりそうな予感はしたんや。
そうは言うても、“予感”やけどな…

『すいませーん、ちょっとお尋ねしたいんですけど………』

予感的中や。
ちゅうか、俺に聞いとるんか?
まあせやろな、他に人っちゅー人はおらへんもんなあ。

「…はあ、どこ行きたいんです…?って、え?自分、どっかで見たような…。」

男子の制服きて、明らかに男装っぽいことはしとるけど、こいつ完璧にあの女優の“昴美陽”やろ。
しかも、今全国で“突如失踪”っちゅーて報道されてる本人やないか。
何でこないなところに、しかも男子の学ラン着て突っ立っとるんや…?
まさか、大阪まで来て失踪しとるんか、こいつは!
いや、でも人違いやったら困るし、確かめてみる、か…?

「自分、昴m『ひっ、人違いですぅぅぅうううう!!!し、四天宝寺中学校って何処ですかぁぁぁあああああ?!』…………四天宝寺、中学校…?」

何やこいつ、四天宝寺の生徒かいな…。
せやけど、やっぱ引っかかるんや、必死に否定しとるところとか、なあ。

「自分、四天宝寺の生徒なん、か…?」

つい質問してもうたけど、よくよく考えたらアホな質問やな。
四天宝寺の生徒が学校行く途中で迷うわけあらへんやろ。
謙也先輩には毎日のように“アホアホ”言うてるけど、大概俺もアホやな。
まあ、そっからは一緒に登校したんやけど、俺が

「ほな、なして標準語なんや?」

っちゅー質問したら、自爆しよった。
やっぱあの“昴美陽”やったんや、あいつ。
せやけど、あんなに才能あって業界では儲かってる奴やのに、なして失踪なんてしよったんや…?
そんな疑問が俺の頭に浮かんだんやけど、その前に聞きたいことがある。

「せやけど、なんで自分、男装しとるのにバレバレな喋り方しとんのや?」
『………あっ、そっか!いっけない!男装してる意味ないじゃん!!!教えてくれてありがとう^ ^』
「はあ、まあええですけど…。」

なんやねん、忘れとっただけかい。
ほんまこいつも大概アホや。
俺の周りにおる奴はアホの二文字が似合うアホばっかや。
俺もやけど。

『ん?けど、何…?』
「もう一つ、聞いてもええですか…?」

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