第1話 U
少女はかなり不機嫌だった。
「まったく・・・、迎えが遅いから目立っているじゃないか」
それに、先ほどから自分に向けられる視線にものすごく腹が立つ。
周囲の者が少女に視線をやるのも仕方が無い。
17歳そこらの少女が軍服に身を包み、あまつさえその軍服が返り血で真っ赤に染まっており、ましてやこの国の物ではないのだから。
それよりもさらに少女をイラつかせる人物がいた。
どうやらつけられているらしい。
少女は突然足を止め、歩くのをやめた。
それに気づいた者も足を止める。
「―――愚かだな」
少女がぽつりと呟いた。
フッと妖艶な笑みで笑うと彼女はいきなり走り出した。
それに気づいた者が慌てて走り出す。
彼女は背後も見ずに走り、路地を曲がり、また人混みに紛れを繰り返した。
どれくらい走っただろうか。
彼女はふと立ち止まり、背後を確認した。
どうやら巻いたようだ。
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