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* * *
蒼詠の調査により楼主の不正もつき出され、役人に引き渡された。
程なくしてこの店は止めることとなった。
* * *
店仕舞いを聞かされて遊女達は近くの店に移った者や、不正に連れてこられた者達は親元へ返されたり、新しい方向先を紹介されたりした。
静かだ。
窓辺に腰掛けながら彼女ーーー蓮華は煙管を吹かせ、下を見下ろしていた。
この店も残すは彼女独りとなった。
ふぅっと白い煙を吐く。
「ーーー遅かったじゃないか」
そう言って彼女は首を傾ける。
入り口に鬼面を被った人物が立っていた。
「みんな避難できたんだろうね?」
「お前を切ればここでの仕事は終わりだ」
鬼面の人物は俯きながらそう告げる。
「そんな顔しないでおくれよ、和葉様」
ゆっくりと立ち上がると蓮華は彼ーーー和葉を手招きした。
ゆっくりと彼は蓮華に近づく。
ちらりと蓮華は背後の窓から下を見る。
人がちらほらと集まってきていた。
閉店を名残惜しむ者が集まってきたようだ。
それを確認すると彼女は後ろ向きのまま窓枠に足を掛ける。
下からは悲鳴が上がった。
それを待っていたかのように廊下に火の手が回ってきた。
「ーーー蓮華」
「あんまり痛くしないでおくれよ」
ふっと笑ったと同時に口から血が溢れる。
次いで腹部に痛みが走った。
ぐらりと後ろに傾く刹那に腹部に刺さる刀が見えた。
「はっーーー」
窓から落下する前に和葉は彼女を支える。
一連の流れを見ていた者達が下から悲鳴を上げる。
和葉はぐったりとした蓮華から刀を抜くと、彼女を抱き抱え、燃え盛る炎の中へと消えていった。
この妖の支配する花街で、一人の花魁が散った。
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