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すっと目を細めて相手を睨み付ける。


「―――去りなさい」


そっと手を放して見えない物を掴むと、菘はそれを握り潰した。


背後でそれを見ていた蒼詠と朔は、ただ呆然としていた。


「結界が・・・」


蒼詠がそう呟いたのを聞いて菘も結界が強まったのを感じた。


それと同時に背後を振り返る。


ふわり、長い銀髪が靡く。


風に舞う桜が見えた様な気がした。


「和葉、様・・・」


「巫女の力、か・・・」


「・・・・・・っ」


菘はぐっ、と唇を噛む。


心臓が早鐘を打つのを抑えられない。


「あの獣は操られていた。奴等がその娘の力を狙う理由が分かりました。二つとないものだからですね。斎紫と同じく」


「蒼詠」


「心得ております」


片膝を着いて一礼すると蒼詠は朔を連れて部屋から出て行った。


「・・・片付けが大変だな」


「・・・何も、聞かないのですか?」


「今更だとは思わないか?祓い屋から逃げて来た事といい、ここに来た事といい、疑問など挙げればきりがない。それに・・・」


素性は関係ない。


ここでは、皆そんなものだから。


「何か、思うことがあるのだろう?」


「すみません」


「謝る必要は」


言いかけて和葉は目を見開いた。


菘が畳に手を付いて頭を下げていた。


「どういう・・・」


「私は、もう・・・これ(短刀)は使わないと斎紫様と約束してきました。でも」


やはり、自分にはこっちの方が向いているようだ。


無意識のうちに短刀に手を伸ばしている。


ためらっている度に誰かに助けられる。


足手まといにはなりたくない。


「戦わずにはいられない。ですから隠していたわけではありませんが・・・私は元、祓い屋の巫女の影。言霊も操れば戦う術を持っています」


「そうか。では・・・」


「・・・・・っ!!」


刃物がぶつかり合う金属音が室内に響いた。


普段は儚く見えるのに武器を構えるとこんなにも違うのか、と和葉は内心関心していた。


それと同時に自らの内側から沸き出る感情に自然と笑みが溢れる。


対する菘は、ただ短刀で刀を受け止める。


「・・・・・・え?」


そのまま次の攻撃に出るかと構えていたらあっさりと刀を引かれて菘は拍子抜けした。


「俺も言わなかっただろう?結界を緩めた理由」


「・・・あ」


「試した。それだけだ。怒ってもいい」


「いえ・・・そんな。当たり前です、祓い屋から逃げてきたなんて・・・にわかには信じられません」


てっきり斬られるものだとばかり思っていた。


「いや、悪かったな。お前の実力が知りたかったんだ・・・」


菘はそっと短刀を仕舞う。


和葉様は、一体何をなさりたいのだろう。


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