09
身を屈めて和葉の目を見る。
「貴方様の事です。何か考えがあるのでしょうが・・・私は商人である前にあやかし屋の者ですから。敵の手の姫を簡単には信用できませんね。恐らく・・・私が一番信用しないでしょうね」
こういう性格ですからと白蛇は苦笑する。
「ですが・・・もしかしたら・・・貴方の心を」
その氷った心を。
「溶かしてくれる存在になるかもしれませんね」
白蛇は顎に手を当てて苦笑する。
「姫も、随分懐いている様ですし・・・」
人見知りだと聞いていた。
今日、ここに来る前に。
和葉からも・・・他の仲間からも。
でも、もいかしたら・・・とも思った。
彼が、自分達の主が連れてきた敵方の姫。
何も無い訳がない。
何か理由がある。
ただ、まだ自分達には話す気は無い様だが。
それともう一つ。
あの姫は、一見儚く見える。
いや、儚くて、脆い。
けれど、それをも凌駕する何かがある。
それが自らの奥不覚に眠る戦闘本能が警鐘を鳴らす。
「蒼詠も言ったかもしれませんが・・・」
あやかし屋の面々は皆同じことを思っているのだろう。
自分達が守るのはただ一人。
「私達の主は貴方です。和葉様。ですが、もし、あの娘が真実敵だった時は」
祓い屋の手の者だったならば。
生かしておく訳にはいかない。
「―――殺しますよ」
偽りの笑みも何も浮べずにただ淡々とそう口にした。
それを聞いて、和葉の口角がゆっくりと上がったのを白蛇は見逃さなかった。
「―――やれるものならな」
その冷たい笑みにぞくりと背筋が凍った。
時折垣間見る和葉の一面。
ああ、やはり。
穏やかに見えても、どんなに己を殺しても。
時折見えるこの表情。
雰囲気。
発するもの。
それらが全て主張する。
全ての者が臆する様に。
この方はやはり、―――鬼、なのだと。
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