03
* * *
何処までも果てしなく闇が広がっている。
何処へ向かっているのか、足は止まる事なく勝手に進んで行く。
―――ああ、あれか。
覚えがある。
久しく見ていなかった。
これは夢だ。
自らの過去の。
どのくらい歩いたのだろうか。
ふと、足に何かがぶつかった。
どろり、とした生温かいものが手に付く。
「・・・血」
そっとしゃがめば、辺り一面血の海で、目の前には一匹の銀色の狼が横たわっていた。
「・・・おい」
体を揺さぶっても狼はびくともしない。
「おい・・・っ!!しっかりしろっ!!」
ざりっと草履の音が響く。
音のする方をゆっくりと振り反る。
そこにいたのは。
見慣れた者の姿。
笑っていた。
何とも残虐な笑みを浮かべて。[ 12/61 ] [*戻る] [次へ#]
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