08
青風を見送ってから、霜惺は背後を振り返った。
「―――おいで、雪音」
衣擦れの音と共に雪音が傍にやってきた。
「霜惺様・・・」
「ごめん。辛い思いをさせたし、またさせる」
これから自分も向かう事になるから。
また寂しい思いをさせてしまう。
「私は・・・大丈夫ですから・・・」
「大丈夫?」
ピクッと霜惺の眉が跳ねたかと思えば、不意に目元を拭われた。
「こんなに泣いているのにか?」
「な・・・そ、それは・・・」
「一応、あいつは置いて行くから大丈夫だとは思うけど・・・一応ね。護身用だと思ってくれ」
そう言うと、霜惺は懐から短刀を取りだしひとふり渡した。
「だ・・・駄目ですっ!!これは」
「大丈夫。もう一つ持ってるからね。それに・・・そんな柔な鍛え方はしてないよ」
霜惺は軽く肩を竦めてみせる。
「―――大丈夫。必ず、帰って来るから。君を置いてなんて逝かないよ・・・」
「―――はい」
お願いだから、早く帰ってきて、と・・・―――。[ 10/23 ] [*戻る] [次へ#]
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