06



青風はぎゅっと拳を握り締める。


「・・・う」


「ん?」


「・・・違う」


「何が?」


まるで青風が何かを言うのを待っているかのように霜せいは口元に笑みを浮べる。


しかし、その目は挑発している様にも見える。


「あれは・・・俺が・・・」


「―――私はもう、何回も自らの式に殺されそうになっているがね」


「―――・・・え?」


パチンと扇を閉じる音がした。


「半殺し、と言えばいいのかな?まあ、修行としょうして奴に私はもう何回も手加減無しで半殺しにされてるよ」


だから、あの様な動きができたのだ。


妖である青風にも劣らないほどの俊敏な動き。


もちろんそれだけではないが。


「まあ、あまり気にする事ではないと思うがね。龍作とて恨んではいないだろうさ。まあ、そんな弟子にした覚えもないしね」


すくっと青風は立ち上がると勢いよく包帯を解いた。


「あ・・・」


雪音が止める間もなく包帯を解くと、青風はそれを無造作に床の上に投げた。


「そんな・・・っ」


傷が塞がっている。


一瞬、チラリと雪音を見てから青風は霜せいの方を向いた。


「俺の衣は?」


「ああ、あっちに干してある。雪音、すまないが・・・」


「承りました」


スッと一礼してから彼女は奥の部屋へ青風の着物を取りに行った。


「・・・あまり驚かないんだな」


「ああ、雪音か?そりゃあまあ・・・陰陽師の妻だからねぇ・・・このくらいの妖じゃ驚かないさ。何しろ我が家にいるのは君よりも遙かに強大な式(妖)だからね」


「・・・初耳だ」


「・・・ふんっ。この私が契約するほどのものだぞ?・・・それに、あれには全てを明かすと約束したんだ」


「・・・なっ」


「だから、私が行ってきた事は全て知っている」


「お前・・・」


「・・・それが、彼女の望んだ事だから」




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