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*  *  *





風が吹いている。


肌にこびり付く様な、嫌な風だ。


竹林に降り立った青風は、自身の長い髪を鬱陶しそうに払う。


「・・・・・・大妖王」


それは果たして誰が付けた名か。


そ奴はその名の通り妖怪の大王と恐れられるもの。


かつて奴と張り合ったものがいたという。


だが、今は何処かに封印されたと聞く。


奴が何故自分に目をつけたのかは知らない。


だが、そのせいで舞姫は見つかってしまった。


力の強い人間を、奴が見逃すはずが無い。


・・・となれば、舞姫や自分と係わった龍作も自然と狙われることとなるだろう。


青風は拳をぎりっと握り締める。


「―――・・・必ず、・・・必ず・・・貴様を倒す・・・!!」









*  *  *















青風が竹林を去った後、その場に姿を現した者がいた。


肩に付くか付かないかくらいの短い髪を風に靡かせる。


身に纏った衣は薄めで裾の短いものだった。


先ほどまで青風が立っていた場所にそっと右手を触れる。


冷たい土の感触がした。


「―――・・・青風」


その者は、その名に様々な思いを込めてそう呼んだ。


一瞬、憂う様な表情をしてから。





やがて、一陣の風が吹くと同時にその者の姿は消えた。





*  *  *






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