01
* * *
風が吹いている。
肌にこびり付く様な、嫌な風だ。
竹林に降り立った青風は、自身の長い髪を鬱陶しそうに払う。
「・・・・・・大妖王」
それは果たして誰が付けた名か。
そ奴はその名の通り妖怪の大王と恐れられるもの。
かつて奴と張り合ったものがいたという。
だが、今は何処かに封印されたと聞く。
奴が何故自分に目をつけたのかは知らない。
だが、そのせいで舞姫は見つかってしまった。
力の強い人間を、奴が見逃すはずが無い。
・・・となれば、舞姫や自分と係わった龍作も自然と狙われることとなるだろう。
青風は拳をぎりっと握り締める。
「―――・・・必ず、・・・必ず・・・貴様を倒す・・・!!」
* * *
青風が竹林を去った後、その場に姿を現した者がいた。
肩に付くか付かないかくらいの短い髪を風に靡かせる。
身に纏った衣は薄めで裾の短いものだった。
先ほどまで青風が立っていた場所にそっと右手を触れる。
冷たい土の感触がした。
「―――・・・青風」
その者は、その名に様々な思いを込めてそう呼んだ。
一瞬、憂う様な表情をしてから。
やがて、一陣の風が吹くと同時にその者の姿は消えた。
* * *
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